気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
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遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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~波と心 Ⅳ~

日暮れをこんなに気にした事は初めてだ。
沈むな、沈むなと願いながら、ただひたすらに走り続ける。
街の中心部から、外れまでどんなに急いでも30分は掛かる。
秋の夕日ではないから、日が落ちるスピードはそんなに速くない。
けれど、このままでは間に合わない。
走って走って走って・・・・。
体育の授業でもこんなに走った事はない。
「っくそ」
心臓が早鐘を打ち、息が詰まる。
肩が大きく上下し、足が上手く動かない。
「あっ」
動かない足が絡み、地面へとダイブする羽目になった。
立ち上がり、服についた汚れを払う。
あちこちに血が滲んでおり、先ほどの事が思い出されると同時に大事な事に気がついた。
自分が着ているのは制服だ。
「やべ、怒られる」
そして、明日も学校だ。
変に冷静になってきた頭で、嫌なことを色々思い出す。
そんな自分の前をあるものが通過した。
「あ、バス・・・・」
少し視線をずらしたところにバス停が見える。
「バスか!」
急いでバス停に向かう。
止まったバスに駆け寄り、ドアが開くのを待つ。
ピー、が、がちゃん。
少々乱暴な音がして、ドアが開く
「あ、運転手さん、すみません。このバス、桜の丘まで行きますか?」
「・・・大丈夫か?坊主。ああ、桜の丘は終点だ。」
傷だらけの姿を見たからか、運転手が一瞬黙り込み、短く言葉を発した。
「ありがとうございます。自転車で派手にこけちゃって・・・。どうやって帰ろうかなって思ってたとこにバスが」
適当な事を言ってごまかし、自分の今の姿に理由をつける。
「そうりゃあ、良かった。乗っていきな」
ブレザーの内ポケットから生徒手帳を取り出し、千円札を取り出す。
母親がもしもの時のために入れておきなさいと言ってくれたお金だ。
「坊主、いいから早く座りな。このままじゃ、遅延が出る」


「え?」
運転手が、笑顔で後ろを指差す。
どうやら、お代はいらないと言ってるらしい。
「ありがとうございます」
軽く頭を下げて、座席へ向かう。
気づけば、乗客はたったの3人で、皆それぞれ自分の世界に入り込み、座っている。
なんとなく、後ろには行きづらかったので俺は、運転手のすぐ後ろについた。
夕陽を眺めながら、バスに揺られる。
幼い頃、何度か二人だけでバスに乗ったことがある。
家の近くのバス停から出るバスが、桜の丘、彼女がいるであろう丘が終点だったのだ。
それに、親には黙って乗っていた。
二人だけの小さな冒険だ。
何故か、彼女が定期的に行きたがった場所だった。
バスは乗客を新たに乗せることなく、終点「桜の丘」に到着する。
「あの、ありがとうございました」
「ああ、やんちゃもいいけど、気をつけて帰れよ坊主」
「はい」
バスの運転手に礼をいいステップを降りる。降りた先には階段があった。
後ろでは、バスの扉が閉まり出発を知らせる音がなる。
「悪い坊主、少しだけ離れてくれるかい?」
車外放送で注意され、俺は慌ててバスから離れる。
今度は深く頭を下げてバスを見送った。
そして、階段を振り返る。
丘の上を見上げると、そこには満開の桜が見えた。
視線を下げ、地面を見つめまぶたを閉じる。
一つだけ深呼吸し気持ちを整え、もう一度てっぺんへ視線を送った。
漸く決心がつき、俺は階段を駆け上がる。


 
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