前編
少年は、机の上に置いてある目覚まし時計を持って、玄関前に座り込む。
正確な時計はそれしかないらしい。
汚れるのも構わずに、玄関に直接座っている。
「後、3分ね・・・。」
小さく呟いて、息を長く吐き出す。
そして、胸に手をあて再び呟く。
「落ち着け、オレ。落ち着けオレ・・・。」
と何度も、何度も。
どうやら、かなり緊張しているようだ。
「いくらなんでも、いきなり殴りかかったらダメだ。落ち着け、オレ。下手したら警察沙汰になるだろ・・・。」
とブツブツと呟き続けている。
緊張しているのでは無く、怒りを抑えているようだ。
一度深く深呼吸をし、目覚し時計に視線を落とす。
「おっし、あと1分。待ってろよ~野郎、ぜってぇ謝らせてやる。」
少し前のセリフをすっかり忘れているらしい。
やる気満々な発言だ。
チッチッチッチ・・・・・。
と目覚し時計の秒針の音がやたらと大きく響く。
「あと、20秒・・・っと。」
そう言いながら、少年ゆっくりは立ち上がる。
そして、覗き穴のあたりに目を合わせる。
「あれ?」
ところが、すぐに目を離して首をかしげる。
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