気の向くままに徒然と・・・
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遼 莉杏
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自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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後編

「おかしいな・・・。」
そう呟くと、もう一度少年は覗き穴に目を合わせる。
「やっぱり、見えない。」
と彼はそう呟く。
どうやら、覗き穴の「向こう」が見えないらしい。
そんな事をしているうちに、いつの間にか、床に置かれていた目覚し時計が12時丁度を指す。
カチリ。
少し大きな音がして、それが合図だったようにいつもの「それ」がやって来た。
コンコンコン・・・。
と、1拍休んで再び音がする。
コンコンコン・・・。


真っ暗なのだ。
普段はまったっく使わないから分からないが、汚れているという訳ではないだろう。
いつもの「やつ」は、この扉1枚隔てた向こう側にいる。
だったら、扉を開けばいいだけの事だ。
現に今だって音は鳴り続けている。
向こう側に「やつ」がいるということだ。
しかし、それができない。
出来る事なら、「何が」いるのか確認してから、扉を開きたい。
いきなり開くのは、いくらなんでも怖すぎる。
こんな、意味もなく毎日いたずらをしに来る奴なんて、きっと頭がおかしいに決まってる。
だから、まずはこちらで姿を確認したいのだ。
もう一度、覗き穴に目を合わせる。
「・・・・・・」


少年は3度目の正直と言わんばかりに、もう一度覗き穴に目を合わせている。
そして、そのまま数秒。
無言のまま、「向こう側」を見ている。
扉の向こうにはまだ「それ」はいるらしく、まだ扉を叩く音は鳴り止まない。


やはり、何も見えない。
真っ暗だ。
いや、真っ暗というよりは、真っ黒だ。
これはいったいどうゆう事だ?

しばらく固まっていた少年がやっと、ドアから体を離す。
そして、左手を額に当てて少しうつむき加減になる。
コレは、彼の考える姿勢だ。


何で見えないんだ?
まさか、相手が穴を抑えてるとか・・・?
いや、まさか・・・。
でも、それ以外に何が考えられるって言うんだ?
「もう一度・・・。」


少年が、呟いてまた覗き穴に目を合わせる。


見えた!!
あれ?表の電気切れてったっけ?
折角、見えたというのに、そこに広がった世界は薄っ暗い世界だった。
正直、見えづらい。
しかし、相手の姿は確認できた。
といっても、相手は真っ黒だ。
一瞬、全身タイツでも着ているのかと思ったがそうではないらしい、。
光の加減で、「それ」は影のようになっているのだ。
「それ」を見ながら、扉を開くかどうか迷っていると「それ」は突然動きを止めた。
「それ」は一歩下がる。
そして、「それ」は急に顔を上げた。
「っ!!!!!」


少年は何の予備動作もなしに扉か離れる。
その表情は恐怖そのものだ。
肩を上下させて、荒々しく息をする。
壁に手を付き胸を抑える。

ドッドッドッド。
と自分の中のものが凄い速さで脈打っているのが分かる。
中々呼吸が戻らない。
頭の中はパニックだ。
「何なんだ。何なんだ。何なんだ。」
目が合った?
まさか、そんなはずはない。
「向こう」からこっちは見えないんだ。
気のせいだ。気のせいだ。
そうやって、自分に言い聞かせながら、壁から手を離す。
扉に背を預けて座り込む。
恐怖が中々離れないのだ。

結局、何なのか分からなかった。
結局、何も分からなかった。

少年は深くため息をついた。
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