しばらく固まっていた少年がやっと、ドアから体を離す。
そして、左手を額に当てて少しうつむき加減になる。
コレは、彼の考える姿勢だ。
何で見えないんだ?
まさか、相手が穴を抑えてるとか・・・?
いや、まさか・・・。
でも、それ以外に何が考えられるって言うんだ?
「もう一度・・・。」
少年が、呟いてまた覗き穴に目を合わせる。
見えた!!
あれ?表の電気切れてったっけ?
折角、見えたというのに、そこに広がった世界は薄っ暗い世界だった。
正直、見えづらい。
しかし、相手の姿は確認できた。
といっても、相手は真っ黒だ。
一瞬、全身タイツでも着ているのかと思ったがそうではないらしい、。
光の加減で、「それ」は影のようになっているのだ。
「それ」を見ながら、扉を開くかどうか迷っていると「それ」は突然動きを止めた。
「それ」は一歩下がる。
そして、「それ」は急に顔を上げた。
「っ!!!!!」
少年は何の予備動作もなしに扉か離れる。
その表情は恐怖そのものだ。
肩を上下させて、荒々しく息をする。
壁に手を付き胸を抑える。
ドッドッドッド。
と自分の中のものが凄い速さで脈打っているのが分かる。
中々呼吸が戻らない。
頭の中はパニックだ。
「何なんだ。何なんだ。何なんだ。」
目が合った?
まさか、そんなはずはない。
「向こう」からこっちは見えないんだ。
気のせいだ。気のせいだ。
そうやって、自分に言い聞かせながら、壁から手を離す。
扉に背を預けて座り込む。
恐怖が中々離れないのだ。
結局、何なのか分からなかった。
結局、何も分からなかった。
少年は深くため息をついた。
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