彼女はいったいどこにいる?
いつもの場所?
いつまでも、公園に立っていても仕方がない。
どこに向かうというわけでもなく歩き始める。
「あれ?香坂心一だ」
フルネームで呼ばれ、そちらを振り向く。
「なにやってんの?こんなとこで?」
しかし、そこにいたのは見たこともない女子二人。
「ダレだよ。あんたら」
「ダレって、まあキミが私たちを知らないのは当然か・・・」
「うん。一方的に知ってるだけだもんね」
黙って聞いてると、彼女たちの着ている服に目がいく。
学校の制服だ。
「とりあえず、分かるように紹介すると、同じ学校の隣のクラス」
「のAとBです」
「・・・なんだよ、AとBって」
「だって、名乗ってもしょうがないじゃん。ね?」
「うん。別にあたしら、あんたに用があるわけじゃないし」
「沙波が今日、学校休んだから様子見に」
「休んだのか。学校?」
「うん」
「って、知らないの?」
「ああ」
「ふーん。ま、いいか。行こう」
「うん」
「あ、おい。待て!」
ここで、彼女たちが家に行くのはまずい。だって、母親は普通に学校に行っていたと思っていた。
「何?」
「あーっと、行かないほうが良い」
「なんで?」
「何でって・・・。病人だろう?寝てるかもしれないんだ。いきなり行ったら迷惑だろ?」
もっともらしい事を言ってみたが、彼女たちの反応はあまり良くない。
「分かってるよ。寝てるって言われたら、すぐ帰るつもりだもん」
「うん」
「・・・・・・もういい。いいから、お前ら帰れ。」
「何で、香坂心一にそんな事言われなきゃいけないの?」
「いいから、帰れ。沙波には俺から伝えとく」
「あ、やっぱ。仲いいんだね」
「何が?」
「二人。キミ、学校じゃ目も合わせようとしないから。でも沙波の話聞いてると、違うんだもん」
「あ、沙波。最近変わった事なかったか?」
「え?」
「今日、学校休んだくらいじゃない?」
「うん。それぐらいかな?」
「わかった。ありがとう。いいから、今日は帰ってくれ。頼む。」
「う~ん。沙波の王子様の香坂くんにそこまで言われたら、帰るしかないよね」
「うん」
女子二人が回り右をして、駅の方へと向かっていく。
そんな彼女たちの後姿を見ながら俺は考える。沙波は彼女たちに何を話していたのだろうか?
再びあてもなく歩き始める。
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