気の向くままに徒然と・・・
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遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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~波と心 Ⅱ~

手紙から視線を剥がし公園に目を向ける。そこには実に平和な風景が広がっている。母親に連れられた子どもたちが思い思いの場所で遊んでいる。
彼らにとっては、とても広い世界なんだろう。親から一定の距離を保って、遊んでいる。
優しい笑顔が甦る。
いつも、彼女に振り回されてた俺は、いつも不安そうに母親の顔を振り返っていた。
そんな時の母親はいつも決まって優しい笑顔をかえしてくれた。だから、俺は安心して、彼女の後を追うことが出来た。
最後の最後に、叱られるということが分かっていても、最後まで彼女を追いかけた。
いつからだろう、彼女の背中を追わなくなったのは。
小学校に入った頃は、もう既に並んで歩いていた。
中学に入った頃は、俺が一歩前を歩いていた。
そして、高校に入ってからは一緒に歩くどころか、会うことも無くなった。
子どもたちの声を聞きながら、手紙に視線を戻す。
『どうして?というのは聞かないで欲しい。だって、理由なんてないから。でもこれだけは知っておいてほしい。私は一度だって、つらいとも思ったことはない。いつもいつも楽しくて仕方がなかった。だけど、世の中それだけじゃダメみたい』
「んの、バカが・・・」
自分の周りから、音が消える。
『だから、私は決めました。サヨナラを言うのは、意外に寂しくないもんです。よかったら心くんも一緒にどう?・・・・もちろん冗談デス。心くんは絶対にそのままでいてください。うん。できれば、私の分も世界を楽しんじゃって。』
文字が霞んできたのは気のせいだろう。
「お兄ちゃん、大丈夫?コレあげる」
急に足元から声がかけられ、世界に音が戻る。
見ると、そこには少女が立っておりその手の中にはポケットティッシュが握られいる。
「ああ、ありがとう」
彼女の手から受け取り、一枚だけ出してまた少女の手の中に戻す。
「ううん、ダメだよ。お兄ちゃんなんだから、泣いちゃあ」
「うん。そうだね。ありがとう。」
「ダメなんだからね。じゃ、ばいばい!」
最後に念をおして、少女は去ってゆく。
その後姿がどこか彼女に似ていた。
『そうだ、ひとつだけお願いがあります。私のお母さんについて、きっとあの人のことだから、責任を感じちゃうと思うの。お母さんのせいじゃないよ。私の身勝手な行動なんだって、言い聞かせちゃってください。できれば、私の変わりに寄り添ってあげてくれると嬉しいです。あ、でもそれはちょっと羨ましいかも・・・。だって、心くん知ってた?心くん、学校の女子の間で人気があるんだよ?私は聞いてビックリしたよ。あの泣き虫だった心くんが、学校で人気者の男の子に育っちゃうんだもん。世の中って恐ろしいよね。』
内容が定まらない手紙はまるで、女子のお喋りのようだった。


彼女はいったいどこにいる?
いつもの場所?
いつまでも、公園に立っていても仕方がない。
どこに向かうというわけでもなく歩き始める。
「あれ?香坂心一だ」
フルネームで呼ばれ、そちらを振り向く。
「なにやってんの?こんなとこで?」
しかし、そこにいたのは見たこともない女子二人。
「ダレだよ。あんたら」
「ダレって、まあキミが私たちを知らないのは当然か・・・」
「うん。一方的に知ってるだけだもんね」
黙って聞いてると、彼女たちの着ている服に目がいく。
学校の制服だ。
「とりあえず、分かるように紹介すると、同じ学校の隣のクラス」
「のAとBです」
「・・・なんだよ、AとBって」
「だって、名乗ってもしょうがないじゃん。ね?」
「うん。別にあたしら、あんたに用があるわけじゃないし」
「沙波が今日、学校休んだから様子見に」
「休んだのか。学校?」
「うん」
「って、知らないの?」
「ああ」
「ふーん。ま、いいか。行こう」
「うん」
「あ、おい。待て!」
ここで、彼女たちが家に行くのはまずい。だって、母親は普通に学校に行っていたと思っていた。
「何?」
「あーっと、行かないほうが良い」
「なんで?」
「何でって・・・。病人だろう?寝てるかもしれないんだ。いきなり行ったら迷惑だろ?」
もっともらしい事を言ってみたが、彼女たちの反応はあまり良くない。
「分かってるよ。寝てるって言われたら、すぐ帰るつもりだもん」
「うん」
「・・・・・・もういい。いいから、お前ら帰れ。」
「何で、香坂心一にそんな事言われなきゃいけないの?」
「いいから、帰れ。沙波には俺から伝えとく」
「あ、やっぱ。仲いいんだね」
「何が?」
「二人。キミ、学校じゃ目も合わせようとしないから。でも沙波の話聞いてると、違うんだもん」
「あ、沙波。最近変わった事なかったか?」
「え?」
「今日、学校休んだくらいじゃない?」
「うん。それぐらいかな?」
「わかった。ありがとう。いいから、今日は帰ってくれ。頼む。」
「う~ん。沙波の王子様の香坂くんにそこまで言われたら、帰るしかないよね」
「うん」
女子二人が回り右をして、駅の方へと向かっていく。
そんな彼女たちの後姿を見ながら俺は考える。沙波は彼女たちに何を話していたのだろうか?
再びあてもなく歩き始める。


 
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