そんな風に答えようとしたら、それよりも早く彼が答える。
「契約の代償。」
当然の事のように彼はサラッと答える。
人に尋ねておいて、答えを待たずにさっさと答えを言ってしまうのは彼らしい。何より、今の彼の表情がいつもの彼らしさを表していた。
どこか楽しそうで、それでいて何かをたくらんでる様な、そんな表情。
けれど、やはりいつもと違う。
それは、満月を背にして傘を差しているせいなのだろうか?
「代償?」
「そう。代償。なあ、今からお前ん家、行ってもいい?」
「はあ?」
非常識にも程がある。今は、間違っても人様の家に出入りしていい時間ではない。
「ほら、話あるし。」
「あ、そうだ。・・・お前、今日なんで来なかったんだ?」
そんな事実を思い出したのと一緒に、鞄を学校に置いてきている事に気がついた。
今からではもう遅い。
「だから、それも含めて。話したいことがたくさんあるんだって!」
「明日じゃ駄目なのか?」
「今日じゃダメなのか?」
確かに、今日じゃ駄目な理由なんてどこにもない。それに、昼寝という範囲を大幅に超えて、今の今まで寝ていたのだから、今夜はもう寝ることもできない。
そういえば、久々に良く寝たな。
そんなどうでもいい事を考えながら悩んだ挙句、彼を家に招く事に決める。
「分かった。」
「おっしゃ!助かった!」
少し喜び方が大げさじゃないか?
しかも、助かったってどうゆう事だ?
「いや~、助かったよ、かなた。お前ん家いったら留守なんだもん。今夜は、野宿決定かと思ったよ。ホント、こんな、寒空の下で寝るなんてありえねぇよな。」
家に着き、ソファーに腰掛けるなり即効でしゃべり始めた永夜は、何故だかいつも以上に饒舌だった。
「なんだよ、野宿って。」
温かいコーヒーの入ったカップを渡しながら、彼に問いかける。やっぱりコイツの事はさっぱり理解できない
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