高校に入っての初めての文化祭。
前日まではどうなるかなんて、まったく想像がつかなかった。けれど、始まってみれば意外にもとんとん拍子に事が進んでゆく。
そんな訳で、長いようで短い三日間は無事に終了した。
無事と言っても、一日日はコンロが使えないとか、材料が足らないかもしれないとか、売り上げが合わない、とかいった必然的なアクシデントがあったし。
二日目は二日目でまったく違ってくる、一般客にいちゃもんつけられたり、頭の悪い生徒が客にケンカ売ったり、買ったりといった小さなパニックはもちろん色々あった。
担任の話しでは、飲食関連の店の中では売上トップらしい。他にも、色々なランキングでも上位総なめ間違いなしだそうだ。まだ、アンケートすら取っていないのに結果が見えているなんておかしな話だ。
でもまあ、終わりよければ全て良しとも言うし。精一杯やったんだ、こんなもんだろう。
けれど、僕は肝心な事が解決できないでいた。
永夜が捕まらなかったのだ。会わなかったわけではない。むしろ、毎日顔を合わせていたし会話もした。だが、少し込み入った話をするほどの余裕がなかったのだ。理由はお互いにあった。
一日目、二日目は僕の方が忙しく、他の生徒が帰った後も色々とやらなければならない事がたくさんあって、彼と話をするどころではなかったのだ。
最終日の放課後になってから捕まえようと思っていたら、着替えている間に逃げられてしまっていた。どうしてなのかはわからない。逃げられたという表現も間違っているのかもしれないが。
そして、今日は片付けの日。
昨日までの盛り上がりはどこへいったのか?
姿形は、いつもとは真逆に派手に飾りつけられていると言うのに、言いようの無い寂しさが漂っている。
まるで、生徒たちに忘れられてしまったように寂しさの漂う学校は、どこか時が止まっているようだった。
生徒たちは生徒たちで、一大イベントが終わってしまい、これから何を楽しみにすればいいのか?という憂鬱感。そして、昨日までのお祭り騒ぎが抜けずに普段よりは若干テンションが高くなっている。そんな、二つの感情に挟まれて、戸惑うような雰囲気を全体にかもし出している。しかも、すぐ後には期末テストが控えているのだから先の事を益々考えるのが恐ろしい。
そんな、雰囲気はもちろん、例外なく僕のクラスにも漂っている。しかし、一名のサボりが出たため、少し違う感情も混じっていた。
片付けは皆で責任を持ってやるものだろう?
「ちょっと、何でアイツ来ないの?」
「そうだよ、一ノ瀬、何か聞いてないのか?」
「俺に聞くな。知るかよ。」
あからさまに、不機嫌な声で短く答える。
教室を掃除しながら、今日何度目かの会話を繰りかえす。
そう、あの野郎、サボりやがった。
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