「話しなら、毎日してるじゃないか。」
「もっと、込み入った話しだよ。多分、今日・・・しかも今じゃなきゃできない話。」
本当に、彼が何を考えているのか分からない。
ここへ来るまでに、動き回っていたせいか暑さを感じ、ブレザーを脱ぐ。手近にあった机の上に置いて会話をリスタートさせる。
「何で、今日?」
「えっ?決まってんじゃん。今日はお前の誕生日!今日、この日以外に、いつしろっての?今日だからこそ意味があるんだ。」
どこか、嬉しそうに・・・笑いながら彼は言葉を紡ぐ。
「今、ってのは?」
「誰もいないから。」
「誰もいないって、もうすぐ先生が見に来る。」
「来ないよ。」
「なぜだ?」
「だって、来ないから。」
「答えになってない。」
「来ないもんは、来ないんだよ。」
さっきまでの笑顔が嘘のように、急に真顔になる。
なぜこうも、次々と表情が変えられるんだか?
ふと雨音以外に何も聞こえないことに気がついた。誰も居ない学校ほど怖い場所は無い。
シーン・・・
と静まり返った学校は、昼間と比べるとまったく別世界へと変わる。
けれど、教室だけは違った。彼がいるおかげなのか、ココはいつもの居なれた世界だった
はずなのに…。
「二人だけで、真剣に話ができるだろう?邪魔も入らない。」
真顔というよりは、無表情。そんな表情で話す彼に、どこか恐怖を覚える。
「・・・・な、何の・・・話・・・なんだ?」
思うように口が回らない。いつもふざけていて、マジメにしている事のほうが少ない彼からは、想像もつかない空気が放たれている。
何か、違和感を覚える。
今、目の前にいるのは、本当にいつも話をしている彼なのか?
・・・・・・・・・・・・。
どこか、遠くで雷の音がした。時機にもっと大きな音がするだろう。
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