目が覚めたら部屋は真っ暗だった。
保健室には行かずに家へ帰って来てしまった事を思い出す。
制服のまま、ベッドへ直行し、そのまま熟睡してしまったらしい。
元々、保健室には行く気がなかった。当然といえば当然だ。
具合も悪くないのに、保健室に行けるほどの勇気は僕にはない。
ベッドの上からあたりを見回す。なぜこんなに真っ暗なのだろう?
ベッドから中々出られずに居た僕は、時計を見て驚いた。
午後十一時を過ぎていた。
「何時間寝てたんだよ…。」
呟きながら、ベッドから降りてリビングへ向かう。
今、この家で使われているのは僕の部屋とこのリビングだけだ。
部屋数は全部で五部屋だが、一人で暮らすには多すぎる。
使われていない部屋は、それぞれ両親の部屋と物置と空き部屋だ。両親の部屋には、あれから一度も入っていないし、今は鍵が掛けられている。
特に理由はない。
入ろうと思えば、いつだって入れる。
昔のまま、あの日のまま、時が止まってしまった部屋。
ただ、なんとなく入らないでいるだけだ。
いや、入らないのではなく…入れないのかもしれない。
空気の入れ替えすらしたことがないから、大変なことになってるだろうな。
そんな事を考えながら、歩いていた。
気のせいか、締め付けられるように胸が痛かった。
あの日から、何度も感じるこの痛みはいったい何のだろう?
空腹を覚え、冷蔵庫を開けてみるが、見事に空っぽだった。
「どうしようか…。」
文化祭に忙しく、買い物にまったく行っていなかった事を思い出す。
窓の外を見ると、天気は悪くない。
「行くか…。」
たまには、夜の散歩もいいかもしれない。
もっとも、こんな時間に開いているのはコンビニぐらいだろうが…。
贅沢は言っていられない。
外へ出ると、直ぐに後悔した。
上着の一枚くらい着てくれば良かった。十一月にもなると、夜は大分冷える。
戻るのも面倒なので、少し急ぎ足で目的地に向かった。
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