まだ椅子の上に立ち、ガッツポーズを保っていた永夜が見下ろしてくる。
「永夜。理由は?」
「何の?」
「お前が…、ヒサヤが不老不死になろうと思った理由。」
「ん~……いつか…な。」
「えっ?」
「いつか、な。気が向いたら話す。これから先、長いんだし。それよか、お前、もっと聞いて置かなきゃならない事がたくさんあんじゃないの?それとも何?オレの話しじゃ当てになんないって?悲しいねぇ…。」
「誰もそこまで言ってないだろう?ったく、意味もなくベラベラと喋んなよ。」
「意味もなくって…ってそんな、ひどいなぁ…。で?無いの?聞いて置きたい事。」
「ん。今のところは無い。」
「あっ、そう?」
「ああ。」
無いというよりは、何を聞いておかなければいけないのかがわからないという感じだ。
「あっ、言ってない事一つあったわ。元友人たちに会うの、絶対禁止ね。」
理由が思いつかなく、思わず眉根をよせる。
「何で?」
「だって、下手したら記憶戻して、あら大変、大混乱!になっちゃうから。」
「………。」
「こればっかりは、絶対守ってほしいんだ。」
「分かった。」
「これから、そうゆう、会っちゃいけない人間が増えてゆくんだ。覚悟しとけよ。」
声のトーンが落ちたように感じたが、ここはあえて無視をする。
彼は、今までに何人の人間に出会い、そして、分かれたのだろう。
「覚悟って…。でも、同じ町に住んでるんだ。偶然会った場合はどうすればいいんだ?」
「『会う』事はない。向こうは、お前を知らない、忘れた訳だから。お前から、話し掛けたり、余計なコンタクトを取ったりしなければ、何の問題もない。」
「つーか、何で、友達限定なんだ?他にもいるんだろう?」
「うんにゃ、一応、元友人達だけ。それぞれ、かけた暗示が違うんだよ。ご近所の皆様には、オレらの存在について、深く考えないようにって感じで、元友人達にはお前の存在を忘却させて、役所やなんかは、死亡扱い。あっ、だから、お役所やお国の世話になるのも絶対禁止な。」
「何なんだ、それは?」
というより、いったい何をすれば役所や国の世話になれるのだろう?
「ん~、だってほら、死んだ人間が急に現れたら、誰だって困るだろう?」
「困る」というレベルなのだろうか?永夜の中の基準はどこかおかしい。
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