「なあ、じゃオレからも質問していいか?」
僕の話しに飽きたのか、レイブンは自分から話題転換を申し出る。
「何を?」
「まあ、色々?」
「例えば?」
「エル女史って何者?」
「レイブン」
「何だよ?」
「聞くこと、違くないか?」
「しょうがないだろ、気になってるんだから」
どうしても気になるらしく、レイブンは悩むような表情を作る。
「何がそんなに気になるんだよ」
「いや、だって。あの人なんで兄王子とあんな仲良いんだ?」
兄王子という単語が一瞬誰のことだか分からなかったが、当てはまる人物は二人しかいない。
「ああ、あの二人は同級生だよ」
「同級生?」
「見えないか?」
僕の言葉にレイブンは不思議そうな顔をするだけで頷こうとはしない。
「まあ、言われてみれば?」
「何が、そんなに不満なんだよ」
「いや、別に不満ってわけじゃ…」
「じゃあ、何」
僕の問いかけに黙るレイブン
「あまり、変な事を二人に言うなよ。下手をしたら殺されるぞ」
「え?」
なんとなく、察しがついた僕は、そんな事を言ってみる。
「いや、ただオレはあの二人、付き合ってるのかなぁっと」
「うん。だから、それがまずい」
思った通りだと、頷きながら僕は答える。
「マジで?」
「ああ。僕も一度…言いかけた時があって、あれはホントに怖かった」
あの時は、ただ「お二人とも、仲良いですね」と軽く声をかけただけだった。しかし、その手の事には触れてはならないらしい。
兄さんは、ただ睨んできただけだったが、エル女史は剣を鞘から抜きかけていたのだ。それを見た、僕は慌てて飛びのき距離を取ったが、エル女史はお付の女に止められていた。つまり、お付の女―確かケイと呼んでいたーが止めていなければ、完全に抜いていたということだろう。
エル女史は冗談だと言っていたが、あれは本気だったに違いない。
「レインに聞いてよかった…」
僕の話を聞いてレイブンが、安堵のため息ともにそんな事を漏らす。
「本人に聞こうとしたのか?」
「ああ、まあね。でも、聞く暇がなかった」
「良かったな、暇ができなくて」
「ホントに」
・・・・・・・・。
話題が途切れて、なんとも言えない間が出来る
「これから、どうするんだ?」
先に口を開いたのはレイブンだった。
「これから・・・?さあ?とりあえず、兄さんと城に戻る・・・そのあとは・・・鍵付きの部屋で一生を過ごすのかな。いや、もしかしたらそれじゃ済まされないかも・・・一族の恥じだって言って死刑かもね?銀行強盗までしちゃったから」
冗談めかして、言ってみたがレイブンは表情を一変させる。
「バカ言うな!そんなわけないだろ!確かに強盗はまずいけど・・・、けど・・・」
「ありがとう。レイブン。大丈夫、多分死刑はないよ。兄さんだって、大丈夫だと言ってくれたから」
そうは、言ったものの本当の所は分からない。でも、一番確立が高い罰が死刑だ。
今までの事もあるから・・・。
兄さんも、もうかばい切れないだろう。
「レイン!逃げよう!今すぐに!」
思いっきり立ち上がり、レイブンは僕の腕をとって、そう叫ぶ。
「逃げるって・・・どうやって・・・?」
レイブンの言葉を聞いて、まず最初に浮かんだ疑問がそれだった。
だって、僕らは今、走ってる列車の中にいる。
僕が絶対に動かない事を理解したのか、レイブンは席へと戻る。
車両の前の扉にも、立警の人間が立っているだろう。
普通に考えて、ここから逃げるのは無理だ。
兄さんだって、逃げる事が出来ない環境だからこそ、僕らを二人きりにしたのだろう。
「どう、やって・・・って聞かれてもねぇ・・・。で、でもっ!やってみなけりゃわからないだろう!」
どうやら、彼も勢いで言っただけで、考えがあるわけではないらしい。
「不可能な事を簡単に言うな。物には限度ってものがあるんだレイブン」
「いや、でもさ、レイン。・・・殺されるって分かってるのに、わざわざ城へ帰るなんて、オレは納得いかないぞ!」
「まだ、決まってないよ。レイブン」
彼を落ち着かせるためにも、僕はゆっくりと言葉を発する。
「でも、あの王家の連中ならっ!」
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