「チェックメイト」
ふざけてそんな台詞を言いながら、安全装置に手をかけた。
カチ。
安全装置を外し、引き金に手をかける。
「レイン?」
「じゃあね」
ニッコリと微笑んでから、グッと指に力を込める。
ぱん!!
変に乾いた音が響いて、車内が静まり返った。
・・・・・・・・。
「レイン!?お前…」
沈黙の後に声を張り上げ、僕を呼んだのはレイブンだ。
「何?」
「何じゃねぇよ!お前、なにやってんだよ!」
「何って?」
「え?」
「見ての通りだよ、レイブン」
銃からは、弾どころか煙も出ていない。音だけが鳴る、完全な偽者だ。
「はははははは・・・」
急に、パロットがおかしな笑いを始める。
「げ。えっと、アシエさん」
急に笑い出したパロットに恐怖を覚え、アシエに向かって助けを求める。
「は、はい!」
今まで黙っていたせいもあってか、声が掠れていた。
「変わってもらっていいですか」
「はい!おまかせを!」
アシエがパロットを押さえた事を確認してから、再び話しかける。
「…あのさ、その改まった言い方、止めてくれません?」
仮にも人を殴っておいて、今更その態度はないだろう?
「え、しかし」
アシエの言葉を、無視していまだに動かないレイブン達のもとへと向かう。
「兄さん」
あと、数歩というとこで、兄さんに向かって銃を放り投げた。
「おっと」
まさか、投げてよこすとは思っていなかったらしく、兄さんは取り落としそうになりながらも、なんとかキャッチする。
「どれ?」
それを横から現れたエル女史が奪って行く。
「最近は出来が良いんだな。見た目だけでは判断できない。ほら」
「レイン?どうして分かった?」
エル女史から銃を受け取った兄さんが、それを見ながら聞いてくる。
「分かったのは、奪ってからです」
「じゃあ…」
「レイン、何であんなすんごい行動したの?」
兄さんが言いかけた事を、レイブンが簡単にきいてくる。
「あのタイプの銃は、銃身握ると撃てなくなるんだ。だから」
銃身を握ってしまえば、こっちのものだと思ったのだ。相手を投げようなどとは思ってもいなかった。
「へえ、やっぱレインはすごいや」
うん、うんと頷きながら一人納得するレイブン。
「それで、兄さん。何でこんな事に?」
「それは、さっき言ってたじゃん」
「違う、僕が聞きたいのはもっと根本的なことだよ、レイブン」
「根本的?」
「レイン。その前に、彼らをどうにかしてくるよ。少し、待ってもらえるか?」
「分かりました」
アシエに向かって一声かけてから、兄さんはアガットを連れて、二両目へと向かう。その後ろに、パロットを連れたアシエが従う。パロットは、打ち付けた腰が痛むのか、半ばアシエに引きづられた状態だった。
「レイン?根本的って?」
どうしても、聞きたいらしくレイブンが再び尋ねてくる。
「オレが聞いたのじゃ、ダメだったのか?」
確かに、歩いていたらたまたま、見かけたので捕まえようと思った。おかしな理由ではないし、それ以外に、言いようがないだろう。しかし、それは国警の場合でしかありえない理由だ。
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