気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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だから、愛しい娘に言い聞かせる事にした。

自分はいなくなるけれど、どうか幸せに生きて欲しいと。
母の存在に縛られる事なく、どうか自由に生きて欲しいと。
どうか、母を忘れこの先何の障害にも負けずに強く、強く生きて欲しいと。

それが、ママの願いだったとセツイは言う。
バカみたいに正直だった私は、忘れて欲しいと言ったママの言葉を素直に実行した。
しかし、ママの存在を忘れてしまっても、約束だけは心のどこかで覚えていた。
結果、今にいたる。

彼の説明をまとめるとそうゆう事になる。
「だから、言ってるだろう?ここは、夢を売る店。現実には叶わない夢を与える店なんだ」
「なんとなく分かった気がする・・・。」
「うん。それは良かった。本当の答えは、君にしか知る事ができない。僕はこれ以上の手伝いはできないから」
「分かった。ありがとう助かったっていうのかな?会えて良かったよセツイ君」
「どういたしまして」
「それで、あの・・・お金とかは?」
「お金?」
「うん」
「ああ、必要ないよ。時計代に含まれてるから」
「ウソ、だって時計2100円だったよ?これって普通の値段だよね?」
「そう?まあ、ともかく必要ないから。悪いけど、このまま寝るわ。お帰りはアチラ」
ダルそうにソファーに横になりながら、セツイは瑞希の背後の階段を指差す。
すぐに動くべきか、彼を心配するべきか逡巡する間に、セツイから寝息が聞こえてきた。
どうやら、もう寝てしまったらしい。
瑞希はこっそりと部屋を出た。3日前は下りなかった階段を一人で下りる。上りの時はあまり感じなかったが、下るときは結構怖い。
ゆっくりと、階段を下りてゆく。
店にまで辿り着くと、そこにはいつの間に部屋を出たのかシノが待っていた。
「オ嬢、マタネ!元気デネ。」
「うん。ありがとう、シノ・・・君?ちゃん?」
「シノハ、クンダヨ」
「そう、じゃあ、またね!シノ君。セツイ君によろしくね」
「ウン、バイバイ!」
カランカランとカウベルが鳴り瑞希を送り出す。
多分、2度とこの店に来る事はないだろう。考えながら、煉瓦の建物を振り返った。


「セツ、セツ。起キテ、起キテ。」
ソファーで寝込むセツイの上をシノがバサバサ飛び回る。
「ウワッ!!」
自由に飛んでいたシノが突如、姿を消した。
「何?」
変わりに不機嫌なセツイの声が響き、ゆっくりと上半身を起こした。
シノは彼の手の中だ。
「セツ、翁ガ呼ンデルヨ」
「何で・・・?」
ボーっとしたまま前方を見据えたままのセツイは、起きたのか寝ているのか判別しにくい状態だ。
「・・・ん、いつ帰って来たん?」
「今ダヨ」
「ふうん。ほな、着替えたら行く言ぅといてぇ」
「ハ~イ」
セツイから開放されシノは再び飛び始める。
「面倒くさいな・・・」
ポツリと呟いてセツイは頭を抱えた。
ソファーから中々離れる事ができない。
「まぁた、上がったんかなぁ・・・」

セツイが下りてきたのは、シノが呼びに行ってから30分が過ぎてからだった。
「大丈夫か?」
「そないな事言うんやったら、呼ばんといてくれる?」
「けれど、何か食べなければ、治るもんも治らないだろう?」
「・・・・甘く見られたもんやなぁ」
自分の席に着いて、呟くように話すセツイは、どう見ても大丈夫そうではない。
「ほら。食欲は?」
セツイの前に湯気が立ち上ったお粥が出される。
「ない」
「じゃあ、こっちじゃな」
続いて出てきたのは、マグカップに入ったレモネード。
「・・・・ありがとう・・・ガキだな・・・・」
どちらも、聞き取れないほど小さな声だ。けれど翁には両方聞こえているらしく、柔らかく微笑んで彼の前のお粥を下げる。
「ところで、テンシ」
「何?」
「前から気になっていたんだが、その言葉の違いはどこで切り替えてるんだ?」
「ん?オフか・・・オンか・・・?」
ポツリポツリと話すセツイの声は、力はないがいつもの不思議な力をもつ音だ。
「セツ、ジャア今ハ?」
「オフだけど、熱あるから・・・考えないで喋ってる」
「・・・・・・」
シノと翁ガ同時に黙る。
セツイの今の言葉を解釈すれば、考えないで喋るから訛りがなくなるということになる。
つまり、仕事中は考えないで喋っているということなのだろうか?
セツイはそんな固まるシノと翁を他所に一人マグカップを両手で包み込み、そのまま中身を眺める。
気のせいか、彼の視線は定まっていない。
これは、彼が熱を出した時特有の動作だ。翁やシノは、彼のこの動作で状態を見る。でなければ、彼自身は具合が悪いとかいった発言はめったにしないので、わからない。
「説明してもいい?仕事、もう終わったから」
「ああ、しかし大丈夫なのか?」
深く考えてこんでいた思考を引き上げ、セツイの声に耳を傾ける。
「うん。報告は早い方がいいだろう?多分、昔の資料出す必要あるから」
「分かった。しかし、無理は禁物じゃよ?」
「分かってる。どうせ、しばらく何もないし」
そして、彼は語り始める。


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