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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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長い事両手で支え持っていたカップをソーサーへ戻し、セツイはソファーの上で片膝を抱えた。
「まず、結論から言うと・・・君の今の母親も、このあいだの『ママ』も君にとって大切な人間であることには変わりない。これは、わかるね?」
「うん」
抱えた膝の上に顔を載せたセツイの視線は、やや俯き加減となり、机の上の紅茶へと向けられる。
「今いる君の母親は、君を生んだ母親じゃない」
瑞希の反応を確かめるようにセツイは視線を上げる。
「けれど、今の君にとって彼女が母親である事は変わらないだろう?」
何の反応もない瑞希を気にしているのかそんな事を言う。
確かにそうだと瑞希は思う。今更、母親じゃないと言われてもそれこそ、どう反応したらいいのか分からない。
「分かりやすく言えば、君には産みの親と、育ての親。2人の母親がいる。ただ、それだけの事だよ」
とても単純な事だと言うようにセツイは言うが、そんな簡単に割り切れるものでもない。
現に今、産みの親の記憶が瑞希にはないのだ。
悩み始める瑞希を他所にセツイは話しを進めていく。
「君が4歳になる頃に『ママ』は病気で亡くなってる」

ママが瑞希の記憶からすっかり消えていた理由は分からない。
セツイが言うには、それにはママが原因にあるらしい。

ママは瑞希が生まれてすぐに発病し入退院を繰り返していた。それでも、娘が可愛くて、愛しくて彼女は病気の体に鞭を打ち瑞希と接した。
瑞希が2歳になる頃には、病院にいるよりも家にいる方が多くなった。一時はこのまま治るだろうと信じられていたが、事は悪い方向に進んでいく。
幸せだったのは、ほんの1年間。
彼女の病気は再発する。
1秒でも瑞希といられる様にと彼女は長期入院をギリギリまで拒んだ。
しかし、それが彼女の病を悪化させてしまった。
娘への愛が、結果的に彼女の死を早める事となってしまったのだ。


病気が悪化すると彼女は病院から離れられなくなってしまった。
3歳になったばかりの瑞希は、家にママがいない事が怖く悲しかった。
毎夜のように泣いて叫んでママを探す。
狭い家だ、探す場所なんて数箇所しかない。
幼い子どもでもすぐに探し終えてしまう。
けれども、少女は何度も何度も同じ場所を探す。
開けたり閉めたりを繰り返して、それでも見つからないと、やがて少女は泣き出した。
父親の側へ行き、「ママがいない、どこへ行ってしまったの?かくれんぼはもう終わりにしよう?パパからママに頼んで、もう出て来てって」けれど、父親にはどうする事もできない。
彼女は今病院にいる。
しかし、どうしてもそれが説明できない。
だから、少女と父親の気持ちはすれ違い、良くない空気が生まれ、それが、少女を余計に悲しませた。
父親が、もうどうにも手がつけられないと、ママに相談をした。

彼女は自分の体の弱さへ腹を立て、自分の行動を後悔した。
娘と最初から離れていれば良かったのだ。
こんな短い間しか一緒にいられないのなら、あの愛しい幼子にこんな寂しい、怖い思いをさせるのなら、最初から会わなければ良かったのだ。
最初から、自分の存在を教えなければ良かったのだ。
医師に病の宣告受け、難しい病気だと教えられたあの日に、全てを捨ててしまえば良かったのだ。
なのに、無駄な足掻きをして、無意味にあの子を悲しませてしまっている。
いっその事忘れて欲しい。
自分の事であの子が泣くくらいなら、自分の存在をあの子から消してしまえばいい。
もう近いのだ。あとわずかしか残されていない。
それまでに、あの娘にどうにかして説明しなければいけない。このままでは、余計にあの子を悲しませてしまう。

彼女の病気は移植手術をしなければ治らない。けれど、それには順番がある。彼女と同じ病気で、ドナーが現れるのを待っている人間が何人もいるのだ。彼女の前にはまだ、何十人にといる。
しかし、彼女の病気は進行が早く、持って半年だと医者に言われたばかりだった。


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