気の向くままに徒然と・・・
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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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「セツ」
「なに?」
「オ腹スイタヨ」
「・・・・翁、夕飯は?」
店内は暗く、ほとんど何も見えない。セツイが持っていたランプの火を消してしまったために、明かりは2階からの光りが僅かに届くくらいだ。
「できとるよ。今日は、鯖の味噌煮だ」
「また、和食なん?レパートリー増やした方がいいんちゃう?」
翁がランプを受け取り、再び灯りをつける。
「いらんとちゃう?それ」
それを見たセツイが怪訝な表情で、翁に言う。
「テンシ、仕事の報告楽しみにしておるよ」
それだけ言い残し、翁はランプを持ったまま一人2階へと上がっていってしまった。
今度は取り残される側となったセツイの表情は不機嫌そのものだ。
「あいかわらず、嫌味なじぃーさんだな」
僅かな明かりに反射して、暗闇の中でセツイの銀の髪がキラキラと光る。
「セツ」
「何?」
「翁ノ事嫌イナノ?」
「嫌ってんやなくて、嫌われてんねん。せやから、未だにテンシって呼ばれてん。まともに名前で呼ばれたことないし」
「ソウナノ?」
「そうなの。ほな、早う上へ行こう」
「急ガナキャ、食ベラレチャウヨ」
「説明しなきゃならないしね」
嫌そうに呟きながらセツイは、階段を上がってゆく。
セツイが2階へ着くと、ダイニングには3人分の食事の準備がしっかりと整っている。正確には、2人と1羽分だが。
シノの分は大きめのトレーの上に小さなお皿がいくつか並んでおり、その中にご飯、おかず2種、水が取り分けられている。
「2人ともお疲れ様」
「どーも」
翁の労いの言葉を軽く受け流し、セツイは入り口から一番遠い自分の指定の席につく。
その向かい側に翁が座り、二人の間にシノがいる形にとなる。
何気ない普段の光景だが、どことなく重い空気が漂っている。
「テンシ」
「雪衣」
「仕事はどうだった?」
「・・・どうもこうもあらへんよ。いつもどおりや、さっきも言ったんやけど、今回のはまだ終わってないねん。報告するんは来週な」
2人の会話はどこか温度差がある。これは、翁ではなくセツイの返しかたの問題のようだ。
「2人トモ。ゴ飯ハ、モウ少シ楽シク食ベルモンネ」
「じゃあ、違う話をしょう」
「何も話すことないやろ?」
翁の提案もセツイは簡単に切り捨てる。
「機嫌が悪いみたいだな」
「ソウミタイネ・・・」
翁がそっとシノに耳打ちをするが、それは意味がない。
「聞こえてるよ」
その後は、翁とシノが会話をするだけで、セツイが乗ってくる事はなかった。



あれから、3日たった。
3日もたったのだ。自分でも良く辛抱できたと思う。
もう、褒めてあげたいくらいだ。
しかし、もう限界だ。何をしてでも今日、全部聞き出してやる。
バン!!
カラッ・ガッ・カラン
扉が乱暴に開かれ、カウベルが不協和音を立てた。
「こんの、似非天使!1週間も我慢できるわけないじゃないの!今すぐ、私が分かるように説明しなさい!」
瑞希の大きな声が店内に響く。
「いらっしゃいませ。待ってたよ。そろそろ来る頃だと思ってた」
少しの間があって、静かなセツイの声が響く。
ドアから日が入り、店内が良く見える。
その光りが届く所、ちょうど店内中央に彼は立っていた。
太陽の光りがあたり、彼の銀髪がキラキラと光っている。
今日も彼は、黒のパンツに白のワイシャツをだらしなく着こなしている。もしかして、いつも同じ格好なのだろうか?
こないだと違う点と言えば、「一応着けてみました」みたいな感じにだらしなくぶら下がっているネクタイぐらいだ。
「待っ、てた?」
瑞希の言葉は不自然に詰まる。
「うん。待ってたよ。でもさ、似非天使はないよね?失礼だなキミは」
にこりと、微笑んだその顔が恐ろしい。
「だいたいさ、似非はなくない?あっ、もしかして僕にケンカ売ってる?いいよ。いくらでも買ってあげる」
今日の彼は標準語なのに饒舌だ。
聞いてもいないというより、言ってもいない事を彼は勝手に進めている。
こうなってくると、瑞希には一番最初に言った台詞を後悔することしかできない。
「何?どうしたの?何で黙ってるのさ?」
「あ、いや、あの。ごめんなさい」
軽く頭を下げて床と睨めっこ。気のせいか、前回来た時も似たような事をした覚えがある。
そして、先ほど喋っていたセツイは当然のように言葉を発さない。
自然と店内に沈黙が落ちる。
クックックック・・・・・
しばらくすると、そんな小さな音、というより声が聞こえてくる。
瑞希は床一点を見つめていた視線を、やや上に向ける。
すると、セツイはお腹を抱えていた。
「えっと、笑ってる?」
「ああ、ごめん。キミやっぱ面白いね。さあ、上に行こう。ちゃんと説明してあげる」
そう言うと、彼はすたすたと歩き出す。
相変わらず、人の存在をさらっと置いていく人だ。



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