あれから、3日たった。
3日もたったのだ。自分でも良く辛抱できたと思う。
もう、褒めてあげたいくらいだ。
しかし、もう限界だ。何をしてでも今日、全部聞き出してやる。
バン!!
カラッ・ガッ・カラン
扉が乱暴に開かれ、カウベルが不協和音を立てた。
「こんの、似非天使!1週間も我慢できるわけないじゃないの!今すぐ、私が分かるように説明しなさい!」
瑞希の大きな声が店内に響く。
「いらっしゃいませ。待ってたよ。そろそろ来る頃だと思ってた」
少しの間があって、静かなセツイの声が響く。
ドアから日が入り、店内が良く見える。
その光りが届く所、ちょうど店内中央に彼は立っていた。
太陽の光りがあたり、彼の銀髪がキラキラと光っている。
今日も彼は、黒のパンツに白のワイシャツをだらしなく着こなしている。もしかして、いつも同じ格好なのだろうか?
こないだと違う点と言えば、「一応着けてみました」みたいな感じにだらしなくぶら下がっているネクタイぐらいだ。
「待っ、てた?」
瑞希の言葉は不自然に詰まる。
「うん。待ってたよ。でもさ、似非天使はないよね?失礼だなキミは」
にこりと、微笑んだその顔が恐ろしい。
「だいたいさ、似非はなくない?あっ、もしかして僕にケンカ売ってる?いいよ。いくらでも買ってあげる」
今日の彼は標準語なのに饒舌だ。
聞いてもいないというより、言ってもいない事を彼は勝手に進めている。
こうなってくると、瑞希には一番最初に言った台詞を後悔することしかできない。
「何?どうしたの?何で黙ってるのさ?」
「あ、いや、あの。ごめんなさい」
軽く頭を下げて床と睨めっこ。気のせいか、前回来た時も似たような事をした覚えがある。
そして、先ほど喋っていたセツイは当然のように言葉を発さない。
自然と店内に沈黙が落ちる。
クックックック・・・・・
しばらくすると、そんな小さな音、というより声が聞こえてくる。
瑞希は床一点を見つめていた視線を、やや上に向ける。
すると、セツイはお腹を抱えていた。
「えっと、笑ってる?」
「ああ、ごめん。キミやっぱ面白いね。さあ、上に行こう。ちゃんと説明してあげる」
そう言うと、彼はすたすたと歩き出す。
相変わらず、人の存在をさらっと置いていく人だ。