「それで?何が聞きたいの?」
「何って聞かれても・・・私がママに会うって言うのはどういうことなの?」
「え?いきなりそこ?」
「だって、ほかに何聞いていいのかわからないもん」
「分かった。僕が勝手に説明する。キミは聞いてるだけでいいよ」
パイをそれぞれの皿に取り分けながらセツイは説明を始める。
シノが崩れた笑いを漏らしながら、自分に取り分けられたパイをみつめている。
どうやら、よっぽどお菓子が好きらしい。
「シノ、涎垂らすなよ」
「ウン、大丈夫」
「はい、どうぞ。紅茶に砂糖とミルクは?」
瑞希の前に二等辺三角形に切られたパイが置かれる。
それは、複雑な網目模様が存在し、見れば見るほど綺麗に出来ていて、とても素人が作ったとは思えないものだった。
ホールの状態をもっとよく見ておけば良かった。紅茶を受け取りながら瑞希はそんな事を思う。
「欲しければレモンもあるよ?」
「あ、うん。大丈夫、ありがとう」
「ん」
瑞希のお礼にセツイは短く返事を返しながら、カップを両手で支え、紅茶を冷ましている。
初めてみる仕草だ。
「セツ」
「何?」
「マダ、治ラナイノ?」
「まあね」
「直らないって何が?」
「風邪」
「風邪?」
「この3日間。ずっと、寝たきり」
「私が悩んで、考えてる間。君は寝込んでいたの?」
「そう。だから今日も非常にダルい」
「えっと・・・」
「だから、さっさと説明して、終わらせる」
「ごめんなさい」
「謝る必要はないよ。僕のミスだ」
セツイはずっと、両手で持っていたカップを漸く口元へ持っていく。
一口飲んで顔を顰めながら、「味がしない」呟いた。
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