「ソノ腕時計ハ、セツガ作ッタモノナノネ」
クッキーも作れて、腕時計も作れる少年。
ってどうなのだろうか・・・瑞希の思考は結構どうでもいい方へと向かっている。
セツイがいなくとも、話を進めるらしく突然切り出し、シノはそのまま突き進む。
「他ニモ、下ニ並ンデルノミンナ」
「うん。それは聞いた」
「アラ、ソウナノ。イツノ間ニ」
少し残念そうな声を出すシノは、ちょっとうなだれている。
「ソレデ、セツハ自分ノ作ッタ物ダッタラ、ドコニアッテモ、ソノ場ノ状況ガ見エルノサネ」
「え?」
「ダカラ、オ嬢ガ時計付ケテ行ッタ場所デノ、出来事ナラミンナ知ッテルヨ」
確かに彼は、瑞希にしか知らない事を言い当てていた。
だからといって、そんなことを簡単に信じられる訳が無い。
「本当に?」
「何デ、疑ウノサ?シノノ言ウ事信ジラレナイ?」
先程否定していた、呼び名を自ら使っているの見ると、そんなにこだわってないのかもしれない。
「えっと、信じないって言うか・・・何ていうか・・・」
「ハッキリシナイネ、オ嬢。モウ、イイネ。ソレ置イトイテ、次イクヨ」
「えっ?あっ、そんな」
「ソレデネ、コレカラガ本番ネ」
質問しようとした瑞希の抗議はあっさりと無視された。
シノは歩き回るのには飽きたらしく、今は一ヶ所に留まっている。
カタン
と音がして、そちらへ振り向くとセツイが立っていた。
「いいよ、シノ。問題ない」
「ホント?珍シイネ、時間モ早カッタヨ」
「ああ、今回は簡単に終るな」
「ヨシ、ジャア!出発ネ」
瑞希にはまったく話の内容が理解できない。
聞いてる限りでは、二人はどこかへ出かけるらしい。
この二人、実は客を客とも思っていないのではないだろうか。
ここへ来てから、放って置かれる事が多い。
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