セツイがシノと言い合いをしている間に、瑞希は時計を取りに行く。
ソファーにポツンと置かれた時計を改めて見ると、自分のマヌケさを思い知らされる。
見ていてもあまりいい気分ではないので隠すように拾い上げる。
そして、それを握り締め、彼らの元へ向かう。
しかし、彼らは戻ってきた事に気づく事無く会話を続けている。
話しかけるタイミングを計るが、それは中々みつからない。
「イツモ、翁ニ言ワレテルヨ。セツ、知ラナイノ?」
「あれの言う事をまともに信じるな。だいたい、僕のいないところで言っていたことを、僕が知るわけもないだろう」
「アア、ソウイエバソウネ。デモ、セツガボケテルノハホントノ事ダヨ」
「だから、何を持ってそんなことを言うんだ?いつ、どこで、誰がそんな行動を取ったていうんだ?」
「朝、イツモダヨ。セツ変ナ行動トッテバッカダヨ」
「それは、低血圧だからだ。寝ぼけてんだよ。おい!時計持ったんだな?さっさと行くぞ」
前半は面倒くさそうに、後半はかなり乱暴にセツイは言葉を発する。
バン!!
と思い切りよく、例の扉を開く。
「セツ!物ハ大切ニ扱ワナキャダメネ。壊レチャウヨ」
「うるさい」
セツイは短く答えて、扉の奥へと消えていく。肩にのったシノも当然一緒だ。
置いていかれる形になった瑞希は慌てて彼らの後を追いかける
「何、ここ?」
「作業場」
「作業場?」
「ソウヨ、作業場ヨ」
「な、んの?」
不自然に切れる言葉は、今の瑞希の気持ちをそのまま表している。
今までいた部屋も不思議だったが、ここはもっと不思議だ。
なぜ、ここまで変な部屋を作ろうと考えるのかが分からない。
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