あれ?
頭の中には疑問符が飛びかう。
「・・・・・・・」
無言でドアに視線を固定したままフリーズしてしまう。
「ねぇ、時計はいらないの?」
「えっ?」
振り向くと、すぐ後ろに腕時計を持ったセツイが立っている。
「その扉」
くすくすと笑いながら、セツイは話す。
「開けなくて正解」
そして、良く考えてごらんと最後に付け足す。
「思い出して・・・って言った方が早い?」
思い出せと言われても、いつ頃の事を思い出せばいいのかわからない。
ドアを見つめたまま数秒。
あっ、そういえばこのドア、ノブが無いんだ。
手を引っ掛ける部分も存在しない。
いったいどうやって開けるのだろうか?
しかし、違和感はそれだけでは無い。
「あっ!」
「僕の言いたい事分かった?」
コクコクと瑞希は何度も頷く。
そういえば、この部屋に入るのにドアなんて通っていない。
急な階段を上がってきたので、ドアが無いのだ。
床下から出てきたと言っては大げさがだが、それに近いものがある。
「はい。さぁ、説明するから座ってもらっていいかな?」
時計を差し出しながらセツイがソファーへ視線を送る。
「ごめんなさい」
「ん?何でや?誤る事ないやろ」
人懐っこい笑みを浮かべてセツイが瑞希の手を取りその中に時計を落とす。
何故か、その口調は最初の可笑しな関西弁だ。
「紅茶、いれなおしてくるから待っときぃな」
それだけ、言い置いてセツイは瑞希の前から姿を消した。
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