「まず、狂い方なんだけど」
手元の作業に集中しているためか、声が途切れる。
最初はまったく分からなかったが、どうやらそれはランプらしい。
「最初は、遅くなってたんじゃない?・・・あっ、空だ」
人に質問を投げ掛けておいて、再びセツイは席を離れてしまう。
戻ってきたセツイは、何か液体を持っていた。
「で、何だっけ?」
とぼけた感じの質問をしながら、セツイは液体の蓋をあける。
ツーンとし匂いが辺りに広がる。
アルコールだ。
「あっ、そうそう、で、さっきの質問。あってる?」
「うん。合ってる」
瑞希には肯定しておく事しかできない。
セツイはいったい何を考えているのだろうか?
セツイがいじっているランプは、少し不思議な形をしている。
瑞希の知ってるランプの形ははここまで細長くはない。
形としては、理科室に置いてあるフラスコに似ているが。
しかし、実際のそれよりは全体的に細長い。
そもそも、目の前にあるものには底が存在しない。
「次は、進んでた。その次が遅れてて、今日が進んでたってわけ?」
「あれ?私、話したっけ?」
あまりにもセツイがスラスラと言うものだから、瑞希はそう考える。
「いいや」と言いながらセツイは、アルコールをランプの一番底の部分に注ぐ。
それから、再び組み立てなおす。
「じゃあ、何で」
そんない細かく、狂った事実を知っていると言うのだ?
「それが、僕の仕事だから」
軽く答えてから、セツイはランプへの作業へと戻る。
しかし、そんな答えで納得できるはずがない。
セツイは、瑞希の動揺を他所に作業に没頭してしまう。
理科室にあるものシリーズで例えると、ガスバーナーに付いているような螺子を回して何かを調節している。
ガスではなく、アルコールだから、ガスの量や空気の量は関係無いと思うが、何なのんかはわからない。
それから、点きが悪いのかマッチを擦り、直接火を点ける。
薄暗かった部屋に、明かりが灯る。
ユラユラと揺れる炎は、どうゆうことか平べったい。
普段見知った炎を、押し花の用に潰してしまったらこうなるのではないだろうか?
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