どっしりとしたレンガ作りの建物の前で、それを見上げて少女たちは、それぞれの評価を言い合っていた。
「充分、古いと思うけど?」
「違うの!ボロいのを期待してたの、古いのはちょっと違うんだよ」
ふ~んと興味なさそうに返事をする瑞希は、建物の前に咲いている花々を見ている。
「咲かせてるっていうより、咲いちゃってるって感じ?」
「そんな感じする。ねぇ!そんな事よりさ、中入ってみようよ!」
「ん~」
瑞希が返事をするのを確認してから、玲は扉に手をかける。
ところが、手をかけた状態のまま玲は動かない。
「瑞希!」
「なに?」
「コレ、開かない」
困った顔をして振り返る。
「うそ、ちょっとかして・・・」
カラン、カラン。
と扉に付けられた大きなベルが音を出す。
「開くじゃん」
「ゴメン、私、押してた」
扉を抑えたままの瑞希を他所に玲は店内へと入る。
「真っ暗・・・」
「ホント」
入った店内は暗い。
明り取りの窓は一応存在するが、布がかかっている為かほとんど意味がない。
天上に付いた剥き出しの電球も点いてはいるが、充分な明るさは確保されていない。
明るいところから来た二人は目が暗さに慣れない為にほとんど何も見えないようだ。
そのため、二人は未だに扉の前から動けないでいた。
しばらくすると、玲がゆっくりと動き出す。
それを見た瑞希も玲に続いて動き出す。
「うわぁ~、すごい!すごい!色々置いてあるよ、瑞希!」
壁に沿って置かれた棚の前ではしゃぐ玲を無視して瑞希は中央に並んでいる机に歩み寄る。
棚に並んでいるのは、たくさんの小物だ。
オルゴールに宝石箱、ガラス細工に何なのか良くわからないもの。
玲は、次から次へと手にとって品物を観察する。
対する瑞希は、机の上に並べられたあるものを集中的に見つめていた。
それに気がついた玲が、持っていたガラス細工を棚に戻し声を掛ける。
「瑞希、欲しい物見つかった?」
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