町外れにある古びた洋館に、ありきたりな怪談話が出来上がったのはいつ頃からだろうか?
いつの間にか広がったそれはもちろん僕の耳にも入っていた。
『蔦の絡んだその西洋風の大きな建物は、この町には不釣合いだ。そんな建物だからこそ、いつの間にか子どもたちの間では幽霊屋敷と呼ばれていた。』
そんな出だしで始まる、どこにでもある物語。
けれど、そんな怪談が出回ったおかげで、周りから距離を置く事が出来たのは喜ぶべき事だろう。
近所付き合いとは結構面倒くさいものなのだ。
『人が住んでいるのかいないのか、ダレも確かめたものはいない。人が住んでる気配はあるけれど、誰もその人間を見たことがないし、生活感というものが感じられないのだ。』
迷い込んでくるのは、近所の猫くらいで、他に来客はない。別に隠れて住んでいるわけではない。買い物にだって行くし、他にすることもないので、未だに学校にだって行っている。普通に出入りをしているけれど、周りはそれを見たことがないと評するのだ。
『けれども、屋敷からは壊れたレコードの音が響き、いつも開いているカーテンが、満月の夜だけは閉じられている。』
最初にその話を聞いた時、僕は思わず笑ってしまった。
雑草だらけだった時は何の話も無かったのに、人が住み始めた途端に広まった。
怪談話や都市伝説、そういったものが出来上がるには、やはりそれなりの理由や意味があるらしい。つまり、何も無いところからは何も産まれない。
確かめようのない不安や恐怖といったものが、つまらない噂話を誕生させた。
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