「ねぇ、帰り買い物付き合ってよ!」
「ゴメン。無理、今日バイト」
「うそぉ~。今日無いって言ってなかったっけ?」
「それがさぁ~。聞いてよ!もう」
紺色のブレザーに、緑と紺のネクタイをきっちりと結び、紺地に緑のチェックの入ったスカート。制服姿の少女が2人午後の休み時間を屋上で過ごしていた。
1人は短いスカートを気にすることなくフェンスに腰掛けている。
「なんかね。もう1人いたバイトの子が急に辞めちゃってさ、昨日店長から電話かかって来て、明日出てくれって」
と、フェンスに腰掛ける少女を見上げる。
「うそぉ、急にっていつ?」
「き・の・う!朝、電話かかって来て、辞めさせてくださいだって!マジありえないよぉ~。昨日は、店長が入ったらしいんだけど、今日は違う仕事あるから頼むってさ」
「うぁ~、信じらんない。何考えてるんだろうね、その子」
「ホント、ありえないよ。で?買い物って?」
「あぁ。うん、あのね、腕時計欲しいんだ」
「腕時計?何でまた。」
「ん~?合ったら便利かなって」
「変な理由」
「そう?」
「うん」
キーンコーンカーンコーン・・・
丁度二人の会話が終ったところで、チャイムが休み時間の終了を告げる。
「あれ?もう終わり?教室戻ろ?」
「うん。よっと!」
軽く掛け声をかけ、フェンスに腰掛けていた少女が飛び降りる。
タン。と着地すると短いスカートがヒラリとめくれ上がる。
「もう。スカートなんだからよしなよぉ」
「いいじゃん。誰も見てないんだから」
「そうゆう問題じゃないって」
「そう?」
「うん」
4階建ての校舎は高台にあるという理由からも、かなり広い範囲に渡って見渡せる。
その屋上ともなれば、景色は抜群だ。
これといった目玉はなくとも、遠くが見えるということは気分がいい。
だから、少女たちは長い休み時間は、狭い教室ではなくこの屋上で過ごす事に決めていた。
校舎内に続く扉を開きながら、彼女達は止まらないおしゃべりを続けている。
「じゃあ、1人で行こうかなぁ」
「そんなに欲しいの?腕時計」
「うん。何か一回欲しいなって思ったら、止まらなくて」
「ふーん。相変わらずって感じね?瑞希」
「そう?」
「うん」
この短い間で繰り返されるやり取りは、彼女たち独特のものらしい。
どこか、冷たい感じも受けるが彼女たちにとっては意思の疎通には欠かせないやり取りなのだろう。
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