「なんか、いいね。冒険してるみたいじゃん。」
「そうか?じゃあ、俺らは遭難中だな。」
「何で?」
「気分的に。」
「さすが、かなた。盛り下げるのは得意だね。」
「いいから、さっさと進め。」
「はいはい。」
「はい、は一回。」
「・・・・・・・・。何かオレ、すっごい損してない?」
「急に何の話だ?」
「いろいろと。」
ガサガサと豪快に彼は進んでゆく。葉の種類によっては手を切る可能性もあるというのに、それをまったく気にしていない。
「お前の色々は、範囲が広すぎてわからない。」
「だから、いろいろなんだよ。」
「要するに、逃げだよな?」
「よいっしょと、はい到着。かなた、鍵。」
肯定も否定も返ってこない。
「人の質問は無視か?って、うわぁ、ゴミだらけだな。」
彼の姿を見て、思わず声をあげる。全身、葉っぱまみれだ。
「お互いにね。」
「だよな。」
ある程度払ったところであきらめる。細かいものまでは無理があるのだ。
「鍵か・・・。やっぱこれだよな。」
「だと、思うよ。」
昨日も話題にしたウォード錠。確かに、外見からもぴったりな鍵だ。重たそうなドアはあからさまに重厚な雰囲気をかもし出している。
やはり、古さからか、鍵を差すのにも苦労する。しかし、先ほどの門扉より鍵はすんなりと開く。
「開いた。」
一呼吸置いて取っ手に手をかけた。押すのか引くのか一瞬迷ったが、玄関は普通引いてあけるもんだろう。
普段開け閉めしようているドアよりも何倍も重たいそれは、ゆっくりと開かれる。
「うわ・・・。」
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