「お化け屋敷。」
雰囲気的に出てくるのは、ドラキュラ伯爵か動く甲冑か。
屋敷の中はひどい状態だった。
まず玄関の先に広がるのは、小さな二階まで吹き抜けになっているホール。上からは大きなシャンデリアがぶら下がっている。正面には大きな階段があり、それが2階まで繋がっている。
しかし、状態がひどいのでどれもあまりいい雰囲気はない。
蜘蛛の巣がどこもかしこも張られており、シャンデリアも壊れてはいないものの黒ずんでいる。
「くしゃみでそう。」
「ホコリっぽいもんな。」
床には絨毯が敷かれており、一歩踏み出すごとにホコリが湧き出てくる。
ホール中央まで進むと、左右に分かれる道が存在した。
「どっち行く?」
永夜に聞かれ僕は左右を見比べる。どちらも、同じ距離だけ廊下があり、突き当りの壁に窓が存在するが、何しろ明り取りの窓が一枚ずつしかないので細部までは見えない。
「明かり持ってくれば良かったな。」
「今から戻る?」
「遠慮しとく。」
「ですよね。」
なんとなく選んだ左側へと足をむける。しばらく進むと一枚目の扉を発見し手をかけるが、そのホコリっぽさに思わず、手を引っ込めた。
「何?どうした?」
「すっごい汚いかも・・・。」
手のひらを見るが、薄暗くてはっきりとは見えない。
しかし、ここでためらっていても仕方がないので、もう一度取っ手に手をかける。
「あ・・・。そりゃあ、そうだよな。」
「今度は何?」
「鍵閉まってる。」
「ああ、なるほど。」
当然といえば当然だ。
「やっぱ。こっちもだよ。多分、全部だね。」
永夜が向かい側の扉に手をかけてから振り返る。
この屋敷の中に扉がいくつあるか分からないが、生憎僕はそんなに鍵を持っていない。
「どこかにあるのか?」
手元の鍵はあと一つだ。さきほど使った鍵と違い比較的新しい。これはまた別物だと考えた方がいいだろう。部屋の扉の鍵はこの屋敷のどこかだ。きっと。
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