軽く駆け足で向こう側の廊下へ行った永夜を見送り、自分の担当分をこなそうと体の向きを変える。しかし、そこで、不自然なものが目に止まる。
「ん?」
本来なら、花瓶や置物が置かれるであろう場所にあるのは、小さな灰色の箱だ。
「何だコレ。」
周りの雰囲気からは明らかに浮いている存在。
近づいて見ると、それが金庫だとわかる。テンキーと鍵穴があるそれは、ホームセンターなどでも良く見る形の金庫だ。
「何やってんだよ、人に命令しといて・・・って、何、これ?」
「金庫。」
「うん。見れば分かる。」
「全部閉まってたか?」
「え?あ、うん。閉まってた。で、コレ何さ。」
「だから、金庫」
「だよね。」
ポケットに手を入れ、鍵を取り出す。
「もしかして?」
「もしかしなくても、これであってほしい。」
「でもこれ、鍵だけじゃ開かなくないか?」
視線は自然と金庫に張り付いたテンキーへと動く。鍵を開けるための数字が何桁かすらも想像がつかない。
ダメで元々、念のために鍵を差込み回してみるが、鍵はまったく動かない。
「ん~、少なくとも四ケタ。多いと八ケタ以上あるよな。」
そんな彼の言葉を聞き考える。
「四ケタ・・・の数字か。普通、誕生日とか産まれた年とか・・・。」
「ダレの誕生日?」
「え?」
「だって、この金庫ってダレのもんだよ?」
「ダレって。」
この家を用意した人間のものに決まってるだろう。と思ったものの、それが、父であるかどうかは本当のところ確かではないのだ。
だた、父の部屋に、鍵があって地図があって・・・・。
「地図?」
「がどうかした?」
「永夜、地図どこやった?」
「え?オレが持ってたっけ?」
「いや、俺が持ってた。」
「おい!」
地図を広げ、昨日見た数字を探す。
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