「自慢じゃないけど、オレ、今まで生きてきて後悔したことがない。ダレに何と言われようと、その時のオレがそう判断するのが一番いいと考えたのなら、そうに決まってる。」
彼の中にある絶対的な考え方はどこから産まれてきているのだろうか?
「せかっく生きてるんだ。ムダにはしたくないだろう?」
突然同意を求められ、僕はとりあえず頷いておく。
「な?絶対にムダにしたくない。だから、オレはいつもそうやって、全力で生きてきたんだ。誰にも否定されない考えをオレは持ってるつもりだ。」
満足げに頷いてから、視線だけで僕に何かを問うてくる。
「お前みたいな考え方は、お前にしかできない。だから、俺は俺に出来る範囲で生きていくよ。」
どこか投げやりな答え。だけど、正論だと思う。けれど、永夜は納得しない。
「だから、それは誰が決めたんだ?オレにできてお前にできない?やろうとしないの間違いだろう?」
挑発的な彼の言葉に僕の中で、何かが変わる。
「あのな、世の中お前みたい、何でもかんでも割り切って生きていける奴らばかりじゃないんだよ。人にはそれぞれ、出来る事と出来ない事があって、その中でどうやって生きて行こうかって必死で考えてんだよ。」
「だけど、お前の場合違うだろ?なんで、狭い範囲で生きていこうとするんだよ?しかも、考えなくてもいいことばかり考えて、考えなくちゃいけない事考えないで。それで、壁にぶつかって見えないふり。」
ニヤリと嫌な表情を作り視線を合わせてくる。
「何がいいたい?」
「別に。細かい事でいちいち悩んで、考えた事全部否定して、お前の中には何が残ってるんだ?そん中に、誰に否定されても、保ち続けられる考えが一つでも存在するか?」
「・・・・・・・・。」
悔しいが何も反論できなかった。
結局僕の中には何も存在しない。
見えるものも、見ないものも全部否定して、ただ毎日が過ぎて行くのを見ていただけだ。彼のように、固定された何かがあるわけじゃない。
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