「やっぱ、普通の部屋だな・・・。」
しばらくの間、それぞれ別行動をとっていた。別行動と言っても、狭い一つの部屋なので、互いに何をしているのかは良く分かる。
「何を期待してたんだ?」
「ん~、期待って言うかさ。」
永夜が、何となく呟いた言葉に僕がわざわざ返事をすることで会話が生まれる。
「何なんだよ?」
「何か出てくるかと思ってた。」
「何か?」
「そ、何か。」
つまらなさそうに話す彼は、やはり何かを期待していたようだ。母の部屋を見た後にこの部屋を見ると、この普通さが異常に見えてきてしまう。
だからという訳でもないけれど、僕らは片っ端から部屋の中を漁っていた。プライバシーも何もあったもんじゃない。
相手は、死人だから文句は言えないだろうが、もしも見つかったら大変な事になるだろう。しかし、あくまでも目的は掃除なので、散らかす事はしない。
「永夜、鍵見なかった?」
「カギ?」
言うかどうか迷ったが、結局僕は口にする。彼の期待に答えることはできないが、何もないよりはマシだろう。
「そう、引き出しの鍵。」
「開かないのか?」
「二番目だけな。」
「何で二番目?」
「知るかよ。」
「だよな・・・。あ、鍵ってもしかしてあれじゃない?」
彼が指差す先にはコルクボードがある。そこには、色々なサイズのメモ用紙が貼り付けてあるだけで、鍵らしきものは見当たらない。
「あれって?」
「紙の下だよ。」
クローゼットの前に座り込んでいた永夜が立ち上がり、コルクボードの前に移動する。
メモ用紙を何枚かどけると、そこには確かに鍵が一つぶら下がっていた。
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