「母さんと、父さんと祖父の三人分。」
「だって、お前、墓は?」
「墓はあるけど、空だ。」
「いや、でもコレだけじゃないだろ?」
「残りは全部、海に流した。」
「何で?」
「なんとなく…。」
「うっわ、なんとなくで海に流すなよ。」
そんなに、変なことだろうか?けれど、やってしまったことは、もうどうしようもあるまい。
「つーか、お前ってキリスト教だったの?」
「何で?」
「だって、十字架あるし。」
「別に、そんなことはない。」
そもそも、遺灰が存在している時点でキリスト教だと言う事を否定している。
「じゃあ、仏壇だの、お位牌だの…そういったものは?」
「だから、手元には、そこにあるものしか残ってない。そう言うお前は、仏教徒かよ?ちなみに俺は無宗教だからな。」
「お前ってやつは、ホント理解できないな…。オレも同じく無宗教だぞ。人を勝手に宗教者にするな。」
「それは、こっちの台詞だ。」
「はぁあ。で、あの大きいビンは?」
ため息をつきながら、次の質問をしてくる。
「ああ。アレは、始めはあのビンに三人分まとめて入れようと思ったんだ。」
「うそ…。」
「いや、ほんと。」
「信じらんねぇ。」
「今では、俺もそう思う。」
正直な話し、あの頃はどうかしてたんだ。死んだ人間とはいえ三人まとめてしまおうなんて、バチあたりな行為にも程がある。
「それで、そのありえない行動を止めた理由は?」
「変な連中に止められたから。」
「…。変な連中?」
「ちんどん屋。」
「はあ?」
「それより、俺からも質問。」
「何で、ちんどん屋?」
「それ、何?」
永夜の質問を無視し僕は、僕の気になった事を尋ねた。いくら訊かれても、これ以上喋るつもりはない。
「無視かよ。ったく、何?これ?」
あきらめたらしく、帰ってきてから、ずっと胸に抱いていたものを指差す。
「ロッカーから取ってきたんだろ?」
「そう、だから、言ったじゃん。オレの商売道具。パソ吉二号。プラス数少ない衣類たち。」
・・・・・。
まるで言っている意味が分からない。
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