少し遅い時間に食べ始めた夕食も終わり、順番に風呂へ入ると、後は何もすることがなくなる。
する事が無いにも関わらず、お互いに同じ部屋に居るのだから、変な話だ。
もしかしたら、お互いに、どちらかが喋りだすのを待っているのかもしれない。
他に居場所がないというのも関係あるが…。
「けじめ、つけないか?」
そう考えていたら、向こうから話し掛けてきた。
「けじめ?」
「そう。けじめ。」
「何の?」
「これからの未来へと、これまでの過去にたいして。」
いまいち、意味が理解できずに眉をしかめる。
未来と過去のためにけじめをつける…?
「何で?」
「何でって、そうゆうもんだろ?」
「そうゆうもんなのか?」
「そう。」
「けじめをつけるって言ったって何をするんだよ?」
「かなたは何がしたい?」
「・・・・・・。」
急にそんなことを聞かれたって困る。
未来と過去のためにけじめをつける。
何をするのが、一番相応しいのだろうか?
「掃除。」
急に単語だけが飛んでくる。
「そーじ?」
上手く聞き取れず聞きかえす。
「そっ、掃除。これを期に綺麗にしておこうじゃない。ちなみにオレは、ちゃんと自分の部屋を掃除してから家を出てきたぞ。」
いつの話しだ?
「ああ、掃除ね。…って、どこを?」
後半部分をすっぱり無視して、再び尋ねる。
自慢じゃないが、どんなに忙しくても、部屋の掃除だけは欠かさずにやっている。少なくとも、こんな、夜中に掃除を始めなきゃならないような環境ではない。
「決まってんじゃん、鍵の掛かった部屋。」
言われた瞬間、何を言っているのか分からなかった。僕という人間はどうも、その手の理解力が低いらしい。
「だってさ、そろそろ開けてやってもいいんじゃない?」
彼の言うことももっともだ。
開けられない理由を考える。
考える。
考える。
思いつかない。
ただ…、開けたくないだけだ。
「ほら、いつまでもホコリだらけじゃ、部屋が可哀想だろ?」
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