確かに、けじめをつけるという意味では、一番やるべき事かもしれない。
良く考えれば、考えるほど、なぜあの部屋に入りたくないと思っているのかが分からなくなる。
ただ、単純に入りたくないだけで、きちんとした理由は何一つ無い。
一人では無理なことも二人でなら可能なのだろうか?
何故か、今はいつも感じる胸の痛みもなかった。
「な?決まりな?掃除しようぜ、あの部屋。オレを入れたくないって言うんなら、オレはここに居るし。」
「いや、いいよ。と言うより、お前から言い出したんだ。手伝え。」
「はいよ。」
ニコリと微笑みながら立ってる姿は、少し怖いものがある。
もしかして、彼に上手く乗せられたのだろうか?
「で、鍵はどこにあるんだ?」
「・・・・・?」
あれ?っと頭の中に疑問符が浮かぶ。
数秒の沈黙。
「かなた?もしかして…?」
「いや、そんなはずはない。ちょっと待て。」
はて?そういえば、最近まったく気にしていなかった。
最後にしまった場所はどこだっけか?
実を言うと、目に入るたびに気分が落ち込むので、場所を変えてきた。
最初は、引き出しの奥、次にカレンダーの裏、あまり開けない戸棚の中、ベランダの鉢植えの中に入れていて、もう少しで捨てるところだったということもあった。
最後に見たのはいつだっけか?
「あっ、思い出した。」
最後に見たのはもう何年も昔の話だ。しばらく強制的に眠らされていたのだから、記憶が曖昧でも仕方がない。
そうだ、最後に見たのは、二十歳の誕生日を迎える前日だった。
客が来るということで、絶対に見られない場所に移しておいたのだ。
「永夜。」
「何?いったいどこしまったの?」
「冷蔵庫開けろ。」
「は?冷蔵庫?鍵、どこやったか思い出したんじゃないのかよ?」
「いいから。」
「はい、はい。つーか、何でオレが開けにゃならんのよ。はいよ、開けたよ。」
ブツブツと文句を言いながらも、言われたとおりに行動しているのだから面白い。
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