気の向くままに徒然と・・・
| Admin | Write | Comment |
カウンター
New!
~足跡~
[01/12 館主 遼]
[01/12 nameress]
[05/20 館主 遼]
[05/20 蒼月薫]
[04/11 館主 遼]
プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
Letter
バーコード
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「んじゃ、次は親父さんの部屋か。」
「・・・・・・・・。」
「って、いきなり黙るなよ、お前。」
母さんの部屋がこの状態だったのに、父さんの部屋が正常な状態という保障がどこにある?
もしかしたら、中は空っぽなのではないだろうか?
父さんの部屋は入った事も無ければ覗いた事もない。
言うならば、未知の領域…。
「かなた?」
「見た事ないんだ…。」
「何を?」
「父さんの部屋。いつも鍵が掛かってた。」
この鍵だって、父さんが身につけていたものだ。コレ以外は他に存在しない。
思い切り鍵を握り締めながら、歩き始める。
いつまでも、母さんの部屋にいるのもつらかった…。
「また、閉めんのかよ?」
「ああ。なんとなく…。この方がいいと思って。」
「ふーん。」
だって、自然に手が動いてた。全然意識していなかったのに…。

父さんの部屋に前に来ると、再び体が動かなくなった。自分の意思とは関係の無いところで、動きを制限している。何度も、腕を持ち上げようとするのだが、思うように手は動いてくれない。横にいる永夜は、ただ立っているだけで何かしようとはしない。
ドアを睨んだまま、動かない僕を不思議に思わないのだろうか?
「あっ、悪い。」
「え?」
「オレ、トイレ行ってくる。」
「あ、ああ。」
何とか、返事をして、トイレへと向かう永夜の後姿を見送る。彼が、姿を消したのを確認すると、何故か急に全身の力が抜け、思わず座り込む。
両膝を抱え込み、頭を預ける。
目を瞑り、息を思い切り吐き出す。
頭を上げ、壁に背を預けて座っていると、思ったよりも早く永夜が戻ってきた。
「何やってるんだ?かなた。」
「いや、ちょっと。」
座ったまま見上げている僕に、永夜は不審を抱く。僕は、答えようが無く視線をそらした。
「ほれ。」
すると、手を差し出される。
「なに?」
意味が分からないと、疑問の声をあげるとそのまま腕を掴まれた。
「いつまで、座ってるんだよ。そりゃ、待たせたオレが悪いが、座り続けられるのは大変むかつく。」
「ああ、なるほど。」
「なるほど、じゃねぇよ。」
よっと。
足に力を入れ、永夜の助けを借りて立ち上がる。彼とくだらない会話をすることにより、先ほどのような、おかしい緊張はなくなっていた。


手の中の鍵をもう一度握りなおし、ドアノブに手を掛ける。ノブの冷たさに、一瞬手が止まるが気にせずに握り締め、鍵を差し込む。
ところが、鍵は最後まで行きつかない。何度か力をこめるが、入る様子がない。
「かなた、鍵、逆。」
「え?あっ。」
ホントだという言葉は声に出さずに、鍵を差しなおす。今度は、何の抵抗もなくすんなりと入る。
カチャリ。
とロックが外れた音がする。
鍵を外し、ドアノブを握っている手を軽く捻る。扉を開くと、廊下から差し込むわずかな光りで部屋の中の様子が伺えた。
「普通の部屋だな。」
永夜が、ポツリと感想をもらす。
確かに、普通の部屋だ。安心する反面、どこか期待を裏切られたような感覚がある。
僕は、いったい何を期待していたのだろう?
部屋の中にあるものは、ベッドに机、パソコン、小さな箪笥、コルクボードに備え付けのクローゼット。こざっぱりとしているが、それはそれで父らしい部屋だ。
パチン、と音がして部屋に明かりが灯る。
「窓、あけていいか?」
ホコリ臭さはそこまで気にならないが、窓を開けるのは賛成だ。空気が悪い。尋ねられてはいたが、自ら窓を開けに行く。分厚いカーテンで閉じられた、外へと繋がる唯一のもの。
カーテンを開くと、まず見えたものは自分の姿だった。外は暗い。クレセント錠に手を掛け少し力を込めて、それを外した。
ガラッと、勢いをつけてレールの上を滑らせる。窓を開くと外の冷たい空気が一気に入ってきた。止まっていた空気が動き出す。それまで、嫌なものしか感じなかった空気が変わった気がした。
「何も見えないんだな。」
いつの間にか後ろに来た永夜が外を眺める。
「ああ、多分公園だろ?明かりないし。」
「ふ~ん。で?何から始める?雑巾がけ?掃除機?それとも、家捜し?」
にやりと笑いながら、永夜は聞いてくる。
実に楽しそうだ。
「普通、掃除ってのは高いとこから始めるもんだ。」
「じゃあ、何から?ホコリ掃いから?」
不満そうに聞く永夜に当然のように僕は答える。
「当たり前だろ?…家捜しからだ。」
「そうこなくっちゃ!」
二人して笑いながら、宙で互いの片手を合わせる。
パシン、と軽く音がして静かな部屋に響いた。



はい。
「ユメダト良カッタ」は本日ラスト。
お次はなんでしょう?
PR
この記事にコメントする
NAME:
TITLE:
MAIL:
URL:
COMMENT:
PASS: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
≪ Back  │HOME│  Next ≫

[166] [169] [170] [176] [177] [179] [182] [183] [185] [186] [188]
忍者ブログ [PR]
material by:=ポカポカ色=