重い足取りで、暗いリビングへと向かう。開け放された扉を、一つ一つ確認しながら閉めてゆく。その度に、胸の痛みが増してくるのは気づかない事にしたくて、歩くことだけに集中した。
薄暗いリビングにはやはりだれもおらず、ただ、窓から入ってくる秋風にカーテンが揺れているだけだった。
「え?風?」
まさかと思い、慌てて窓に近づく。
そして、一気にカーテンを開いた。
驚きの表情で振り返った永夜と目が合う。
「・・・・よ!おはよう。」
少しだけ開いていた窓を、全開しながら元気良く朝の挨拶をするが、僕の頭の中は真っ白だ。
「・・・・・・。」
彼の顔を見たまま、僕は静止する。正直何の言葉も浮かばない。
「どうした?」
そんな僕に疑問に思ったのか、彼は不思議そうな声と表情で尋ねてきた。
「・・・・。何やってんだよ、お前。」
彼の言葉を完全に無視をして自分の疑問をぶつける。
「え?何って、光合成?」
「お前はいつから、植物になったんだ?」
日当たり抜群のベランダで、彼は日向ぼっこをしていたらしい。
「ん~、酸素は出せないけど、太陽は大切なエネルギー源だぞ。」
「あ、そ。」
言い切ると窓を閉める。鍵に手をかけるが一瞬考えて閉めるのをやめておく。部屋の中を振り返ると、先ほどまでの暗さが嘘のように明るく見えた。
「昼食べて、出かけるか。」
自然と頬が緩むのがわかる。否定したくても否定できない、けれど、理由のわからない喜び。
後ろではなにやら騒いでいるが気にしないで置こう。
鍵は閉めたフリをしただけで閉まってはいない。白いレースのカーテンだけを閉めて僕はキッチンへと進んだ。
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