それから、しばらくセツイの無駄話は続いた。
見た目は冷たい感じで無愛想なイメージがあるのだが、喋りだしたら止まらないらしい。
冷たい感じというのも、銀髪からイメージされるだけで見た目と中身が一致しないようだ。
「質問してもいいですか?」
瑞希が発言をするにはタイミングを見計らわなければならない。
それは、例えば相手が紅茶に手を伸ばした時とかお菓子を手にした時だ。
「どうぞ?」
セツイは不思議そうに、首を傾げてから一言、瑞希に許可を出す。
「あの、それは染めてるんですか?」
瑞希の中でずっと気になっていたことコレだった。
本当は、どうやったらそんなに綺麗に染まるのかが聞きたかったのだが、単刀直入に聞くより、少し遠まわしに聞いたほうがいいと判断したためだ。
「あ~、これ?」
そう言いながら、セツイは前髪を少しつまんで、それに目をやる。
「どっちだと思う?」
「えっ?」
まさか質問で返されるとは思ってもいなかった瑞希は答えにつまってしまう。
「自前だよ」
最初から、瑞希に答える権利はなかったらしい。
すぐに、セツイは自ら答えを言ってしまう。
しかし、その答えが瑞希には信じられない。
どうみても、彼の中に外国人の血は流れていない。
目は黒目だし、顔も整ってはいるが外国人のそれとは違う。
しかも、彼は自分で横浜生まれ横浜育ちだと名言している。
では、どうやったら日本人の子どもが銀髪になれるのか?
「隔世遺伝って知ってる?」
納得できないでいる瑞希に気付いたのか、セツイはそんな質問を投げかける。
「祖父とか、祖母に似るって事なんだけど。僕の祖母が銀髪だったんだ」
またしても、聞いておきながらセツイは自分で答えを言ってしまう。
そして、彼のセリフに違和感を覚える。
先ほどから、一切なまっていない。
「おばぁ様は外国の方?」
ニコリと彼は微笑んだだけで、瑞希の質問には答えない。
「話が長くなるから。今度は僕からの質問だ。この時計について」
先ほど、1人で喋っていたイメージからはかけ離れた表情でセツイは瑞希と視線をあわせる。
そして、さきほど感じた違和感のもう1つの正体に気がついた。
一人称が違うのだ。最初は「オレ」と言っていたのにいつのまにか「僕」になっている。
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