「だから、何?」
という瑞希の疑問は声にはならない。
あくまでも、心の中で思うだけだ。
いっそのこと聞けてしまったら楽なのだろうけれども。
「あの・・・?」
変わりに、音となったのは中途半端な疑問系。
「何?」
「それを、何に・・・」
セツイは、手の中で3つの石を転がしながら、机に腰掛ている。
腰掛ているというよりは、寄りかかるっているというほうが、ぴったり来る。
そんな彼の表情は、無表情。
「使うかって?」
カチカチと、石同士が触れ合う音がする。
この部屋は静かすぎて、小さな音でも良く聞こえていた。
例えば、瑞希の横にある棚に置かれた先ほどのランプ。
時々、ジッと音を立てて存在を主張している。音がする度に、瑞希の視界の中のセツイの影が大きく揺らいだ。
この部屋に存在する灯りは、これ以外に四隅の壁に掛けれたランプだけだ。
「力を借りるんだよ」
ゆっくりと時間が流れる中で、ゆっくりとセツイが言葉を発する。
「まじないをするのに、僕だけの力では足りないから」
「ソレハ、セツガ修行不足ナダケネ。早ク、石無シデモ術使エルヨウニスルベキダヨ」
「シノ?」
「何?セツ」
「黙ってろって言わなかった?」
「言ッテタネ・・・」
セツイに威圧的な台詞と視線を送られ、シノは翼でくちばしを押さえシュンとする。
「ともかく、石には力がある。そうゆう話しは聞いた事あるだろ?」
「あ、うん。パワーストーンだよね?昔流行った。今でも時々みかけるけど」
「後半は余計だ。知っているって分かれば充分だ」
不機嫌そうな声音は相変わらずだが、それにも波があることが分かってきた。
ちなみに、今は大分機嫌が悪い。
シノの台詞で一気に空気が冷めたのだ。
何故かセツイが黙り込む。
彼が言葉を発しなければ、この場での会話は産まれない。
考え込むような様子を見せてから、彼は歩き出す。壁一面が引き出しになっている方へと向かい、その真ん中に張り付いた燭台を手にする。
「外れるんだ!?」
思わず声に出た瑞希の驚きは、セツイの耳には入っていないのかまるで反応がない。
燭台を散らかった机の上に置き、腰に付けたエプロンの様な道具入れからマッチ箱を取り出す。
続いて、机の引き出しから長い蝋燭を3本取り出し、燭台に取り付ける。
「さあ、用意ができた。準備はいいかい?」
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