セツイは重ねた手で石と瑞希の手、両方を包み込むように握る。
「準備はいい?」
「え?準備?何の?」
「色々」
答えを曖昧にして、ニッコリと微笑むセツイ。
先ほどまでの不機嫌はどこかへ消えてしまっているようだ。
「いい?3つ数えたら目を閉じて」
瑞希の目の前に、空いている方の手―左手―で指を3本立て3を示す。
「理解できたら、はい。分かってないなら、いいえ」
とここで、答えを待つためにも間を開ける。
しかし、瑞希の返事はない。
「返事は?」
あまりにも、反応がないので、再びセツイが問いかける。
「あっ、はい。大丈夫、で・・・す?」
「何で疑問系?寝るのにはまだ早い時間だよ?キミ、ホントに大丈夫?」
セツイは眉間に皺を寄せ、瑞希の顔を覗き込む。
「ゴメン、ちょっとボーっとしてた」
セツイの視線から逃れるために、瑞希は俯きながら小さな声でそう答えた。
「ふ~ん。まあ、いいや」
「セツ?イイノ?」
セツイの独り言にシノが問いかける。
「何が?」
シノの声を聞き、セツイは視線を移す。
「適当スギダヨ」
「シノ、適当って言葉の意味知ってる?」
「モウイイヨ、セツ。続キヲドウゾ」
「はい。どうも」
シノが興味を無くしたのをいい事に、セツイは会話を打ち切り瑞希の方へ向き直る。
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