「言ってる意味が分からないぞ、レイブン」
「だから!あの、妙な少年が噂の王子じゃないのか?」
少し、興奮しながら喋るレイブンの勢いはすごい。
「・・・んな、バカな」
思わず肯定しそうになるのを、どうにか否定する。
「だって!!んごっ・・・」
「バカ、喋るならもっと声を抑えろ、レイブン。後ろに聞こえるだろ?」
喋ろうとしていたレイブンの口を無理やり塞ぎ、小声で話し掛ける。
「レイン・・・。お前、戻ってきてから、性格きつくないか?」
「そんなことはない。だいたい、何でそんな事言い出すんだ」
「いや、だってオレの事殴るし、言葉遣いが乱暴に」
「僕が聞いているのは、そっちじゃない」
「ああ。えっと、色々理由はあるぞ。ほら、まずこれ見てみろよ。ここんとこ」
そういいながら、渡されたものは先ほどの新聞だ。
そして、指差されたところを読んでみる。
『首都から乗った乗客はそんなに多くはない。駅長の話しでは、その日乗った乗客は、個室の客が2組と出稼ぎや仕事やらで乗ったのが十数人。王子の年齢に近い人間は乗っているが、1人は隣町に祖母を見舞いに行くという少女と無愛想な少年1人。以上の事から王子は夕方は発の列車には乗っていないとみられている。』
読み終わったところで顔を上げる。
「その、無愛想な少年ってのがレインのことだろ?」
「あれ?レイブン、お前、主都から乗ってないのか?」
「え?ああ、うん。オレは隣町からだよ」
首都に用があったみたいな言い方しているから、てっきり首都から乗ったのかと思っていた・・・。
「で?これがどうしたんだ?」
「どうした?ってそんな。えっと・・・ようするにだな・・・王子は首都から姿を消したってことだろ・・・?んで・・・、昨日出ている列車は、銀行強盗とか色々あって・・・規制が掛かったらしいから、この列車だけなんだ」
考えながら喋っているからなのか、とてもゆっくりな話し方だ。
そして、新聞の読み始めた場所も、少し違ったらしい。
知らない情報をレイブンはサラッと口にした。
待ってみるが、話し出そうとしないので僕が後を引き継ぐ。
「つまり、首都から出る方法はこの列車のみ。しかし、実際王子は首都にはいない。という事は、この列車に乗って、しかも隠れて乗り込み首都を脱出した。そして、現在も見つかっていないと言う事は、今もまだ列車に乗っている」
主都と主都近辺の町はとっくに王立警察隊が探しただろう。それで、見つかっていないと言う事は、首都及び主都近辺には居ないという事だ。
「そう!それが言いたかったんだよ。すごいな、レイン」
何故か、とても嬉しそうに僕の肩をたたく。
「んじゃ、直接本人に聞いてみよう」
そう言いながら、僕は座席を立ち上がる。
「え?ちょ、ちょっと、レイン、待った、待った」
「何でだよ?」
「いや、だって聞いたって答えないだろ。普通」
「聞いて見なきゃ分からないだろ?ホラ、行くぞ」
ふざけながら僕は言う。
少し、楽しくなってきた。これで、僕がこの列車に乗った意味がつかめた気がする。
そして、これからどうするかもという事も。
「あっ」
と突然、レイブンが間抜けな声をだす。
「何だよ」
「初めてみた」
「何を?」
「天使」
「はあ?・・・レイブン、頭使いすぎて、おかしくなったのか?」
「失礼なやつだな。オレは正気だぞ」
ははは、と軽く笑いながらレイブンは元の座席へ戻っていく。
結局、話しがまとまっていない気がするが、いいのだろうか?
悩みながらも、僕も先ほどまで座っていた場所に戻る。
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