「はは、随分冷めてるねぇ、レイン。てかさ、なんか昨日からのお前の話し聞いてると、王家を嫌ってるように感じるんだけれど?」
「大っ嫌いだ。あんな連中」
「・・・・・・・」
「なんで、そこで黙るんだレイブン」
「いや、まさかそんなストレートに・・・」
だからって、そこまでビックリする事はないだろうと言おうと思ったが、言わない方がいいだろうと思い、言葉を飲み込んだ。
この国の、王家支持率は九十%以上と非常に高い。
だから、僕のように王家を嫌っている人間は物凄く少ない。
今のような発言は、下手をすると反逆者あつかいされてしまう。
レイブンが驚くのも当たり前だ。
そして、それだけの支持率を持っていても、三男・・・つまり、第三王子に関してはまったく違った。
レイブンから新聞を奪い取り、書かれた文字を追ってみる。
レイブンの言ったとおり、まったく進展していないらしく事件については最初の三行しか触れていない。
その内容からすると、いつもはたくさん入る目撃証言がまったくない事から、今後の捜査はかなり難しいだろうという事と、誘拐の線も視野に入れ捜査を続けるというものだった。
そして、その先へと進む。
どうやら、他の王子に取材を行ったらしい。仕事の速い連中だ。
『アイリス王子には、四人の兄姉がいる。彼らに弟・アイリス王子について尋ねてみた。長兄である、ゼニス王子(二六)はすでに王国府の仕事についており、忙しい中、快く我々の取材を受けていただけた。「アイリス?ああ、可愛いよな、あいつ。母上に似てすごい美人で。え?何?失踪について?そうだな、いいんじゃない?あいつらしくて。でも、もし何かの事件に巻き込まれてたら…え?心配かって?そりゃあ、そうだろう?実の可愛い弟だぞ。あいつ、夢中になると我を忘れる事があるからな…変な事に巻き込まれてなければいいけど。あ、そういえば、ほら、今、丁度祭り前で忙しいじゃない?え?いや、全然脱線してないよ。うん。こないだ会いにきてくれたみたいなんでけど、門前払いされちゃったみたいで、それもあって旅に出てみたくなったんじゃない?ほら、オレも若い頃そうだったから・・・まあ、オレには飛び出す勇気なかったけどね、状況も全然違ったし。オレなんか幸せもんだよな・・・」以下略
第一王子のゼニス様は王家の中でも唯一、アイリス王子の肩を持つ。そして、優秀な彼のたった一つの問題が喋りすぎなところだ。』
優秀だと言われる、彼が王位継承の最有力候補じゃない理由は、今回のように問題児であるアイリス王子を認めていることに原因があるらしい。
そして、次にはこう書いてある。
『そして、一番上の姉であるメイ様(二四)には取材許可を得られず。彼女は「自分はすでに王家を出ており、関係ない。」と一言だけ、コメントを残した。次兄であるティール王子(二一)は妹のリリー(二十)姫と共に語ってくれた。』
「な?な?そこまで、言われるとむかつかない?」
真剣に読んでいると、急にレイブンに話しかけられた。
「何が?」
「だって、仮にも身内だろ?自分の弟なわけだろ?それを・・・こんな、言い方するなんて絶対許さない。ほら、まったくの他人のオレでさえこう感じるんだぜ?アイリス王子はどう思ってるんだろうな?」
言っている事が少し変なのは、それだけ興奮しているのだろう。
まったく、関係ない僕ですら声をかけるのをためらうほど、彼は怒っていた。
「なあ?レイン?お前はどう思う?オレ、今まで、王家について全然知らなかった。こんな新聞読まなきゃ良かったよ」
「僕は別に・・・。お前もそこまで、思い入れする必要ない。こんな事、どうせ僕らには関係ないんだ。僕らはただ、普通に生きてればいいんだ・・・」
そうさ、関係ない。
新聞を放り出し、僕は席を立ち上がる。
「どこ行くんだ?レイン」
「デッキへ・・・」
「あっ、じゃ」
「ついて来るなよ」
そして、僕は1人デッキへ向かう。途中財布を取りに引き返すかどうか、迷ったが結局戻らすにそのまま向かう。
次に行く時に何か買おう。
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