昨日の、いや日付は変わっていたから今日の夜と言うべきなのか・・・。
まあ、そんな事は置いといて・・・。
夜中に出会った寂しそうな少年は、今もまた独りでデッキへ行ってしまった。
「また、置いてかれたなぁ~」
前回、自分が置いていかれた場所はデッキだったが・・・。
どうも、ああいう子どもはほっとけない。子どもと言っても1コ違いらしいが、見た目も中身も子どもっぽい。
だいたい、何で常に眉間に皺が寄っているんだよ・・・たかが一五のガキが。
まだ、たいして話しはしていないが、今までの会話から読み取れたのは、どうも世の中について悟りすぎてる・・・というか、冷めてると言うか・・・。
「あ~、なんかわけわかんねぇ~」
あれ、もしかして矛盾してる?
結論、冷めてる子どもほど可愛くない物はない。
ガタン、ガタン・・・・
列車はいつの間にか走り出していた。レインは、いつごろ戻ってくるだろう?
今までの会話から、彼について考える。
頭の回転は速いらしい。
自分ではまったく気づかないような事を、彼は指摘していた。
学校には行ってんのか?
「聞いてみるか」
ボックス席に座り、向かいの座席に足を投げ出す。窓の外を眺めながら今までの出来事を振り返る。
年が近い子どもと話しをしたのは久しぶりだった。
だから、こっちから無理に声を掛けたのだ。
本当は、誰とも会話をしたくないと思って、屋根の上に居た。
ずっと、あの場にいるつもりだったのだ。
その方が、景色が良く見えるし、降りる駅を探しやすい。
目的地を定めない旅はそうゆうところが面白い。
しかし、それは数時間で終わった。
誰も来るはずがないと思っていたデッキに、人がやってきたのだ。
始めは、自殺でもするんじゃないかと、正直思った。
浮かない顔して、空を見上げて、そして泣きそうな顔をしていた。
だから、わざとふざけた調子で声をかけたら、第一声が「無賃乗車」。いい性格してるよな。
話しを聞いているようで、聞いていない。
つまらなそうな顔をしているが、実際は結構楽しかったりするらしく、きちんと会話に付き合ってくれる時もある。
一番驚いたのは食事の時だ。
内容にも驚いたが、長く喋るレインに驚いた。
不機嫌そうに話す姿は、見ていて面白いものがあった。
こんなやつと一緒に旅をしたら、面白そうだと気づいたのだ。
レインは、どう誘えば付いてきてくれるだろうか?
やはり、ああいう子どもにはストレートに言うのが一番効くだろうな。
しかし。
「どうゆう環境で育ったんだよ・・・」
育った環境については、人の事言える立場じゃない。自分が育った環境は最悪だった。
唯一の理解者が、名付け親でもある仕事を引退したばかりの祖父だった。
彼には理解者は存在していただろうか?
環境の悪さで言えば、あの家出王子も同じか・・・。
もしかして、レインも家出してきたのだろうか・・・?
思考はどんどん広がっていって、まとまる様子がない。
いつもの事だ。
考えている事が、とどまる事を知らずにどんどん広がって行き、最終的に何を考えているかがわからなくなる。
これだから、考える事が面倒くさくなるのだ。
結局、答えが出ないまま放置されている問題が、自分の頭の中にはいくつもある。
パシィ!
と小気味いい音と共に頭に衝撃が走る。
瞬時に考えていたことが吹っ飛んだ。
「おい。真っ昼間から寝るな、レイブン」
「はぁ?寝てねぇよ!このバカ!いきなり人をひっぱたくな!」
「妙なもん拾った」
と差し出されたのは、自分らと同い年くらいであろう少年。
「拾ったって、レイン・・・」
どうやら、少年は気絶しているらしく先ほどからちっとも動かない。
「まとめると、荷物室を覗いたら、こいつがいて、話し掛けたら逃げ出すから、とっ捕まえて殴り飛ばした・・・って事?」
「ああ」
ああ、って自分よりデカイ人間殴り飛ばすってこいつ・・・。
どうやら、人は見た目では判断できないらしい。
レインは見た目で言えば、軟弱だ。
ん?なんか違う?
背はオレより低いし体格も華奢だ。
全体的には、小柄という言葉が良く似合う。瞳の色は、ブルーで髪は完璧なブロンドヘアーだ。
顔は・・・どうなんだ?
雑貨屋のシアさんの話しでは、女顔だそうだ。
笑った顔は、正に天使・・・。
って、あいつオレには一度も笑ってねぇぞ・・・。
つーか、どうすんの?コイツ。
「どうすんだよ?レイン」
「いや、だっていくらなんでも、ほっとくわけにはいかないだろう?」
まあ、確かに正論だ。
だからって、こうゆう場合は車掌かなんかに伝えるのが普通だろ。
「じゃあ、ちょっと見ててもらっていいか?レイブン」
「あ?どこ行く気よ、レイン」
「車掌呼んでくる。」
なるほどね・・・ちゃんと自分で呼びに行くんだ。さすがだ。
「ん。行ってらっしゃい」
やっぱり、レインは面白い。
これは一度誘ってみるべきだね。
だめで元々、当たって砕けろっていうし。
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