「シノ、羽」
戻ってきたセツイは、さきほど部屋にあったランプを手にしていた。
もちろん、灯は付いたままだ。
瑞希たちの会話などまったく無視でシノに話しかける
「ん、どうも」
シノが自らの翼から1本羽を抜き、それをセツイへと渡す。
セツイは、受け取った羽を胸ポケットに仕舞い、瑞希の前を横切り、机のに向かう。そして、上から2番目の引き出しを開けた。
「あ~っと…―」
引き出しの中を物色しつつ唸りながら、頭へと手をもって行く。
髪をかき上げ、そのまま静止。
引き出しの中には、たくさんの石が入っている。
セツイは石の大群を睨みつけたまま動かなくなってしまった。
瑞希には聞き取れない声で、ブツブツと呟きながら石を手に取っては戻してゆく。
「こんなもんか・・・」
3つの石を手にとり、漸くセツイが顔を上げた。
それを、カチカチと手の中でもてあそびながら瑞希の前へ。
「一応説明ね。過去だの未来だのは一先ず置いといて、キミに今からまじないを掛ける」
「おまじない?」
「ああ、言ったろう?ここは、夢想を売る店だ。つまり、現実ではありえない物を売る。それは、形ある物だったり存在すらしないモノの場合もある」
「う、ん」
曖昧に頷く瑞希に、一瞬セツイは訝しげな視線を送るが、直ぐにそれを手元の石へともっていく。
「それのために、使い魔であるシノの羽と、この石が最低限必要なものなんだ」
「使い魔?」
「使い魔」
「ただの鳥じゃないの?」
「ただの鳥が、こんなに喋るわけないだろう。常識でものを考えろ」
「じゃあ、何?」
「だから、使い魔。僕のまじないが掛けてある」
「・・・・」
なんとかして、話についていこうと思うのだが、内容がそうはさせてくれない。
「いい?続けるよ?」
そこへ、セツイが確認するように尋ねてくる。
しかし、その声音は否定を表す事を許さないといった雰囲気を持っている。
コクコクと動作だけで返事をし、先を待つ。
「この石はそれぞれ・‥赤いのがカーネリアン情熱や勇気を与え、あらゆることを勝利へと導いてくれる。白黒交じりのがハウライト。悩みや不安、トラブルを解決へと導く。最後の白が、スノークォーツ。物事をやり直す力を与えてくれるものだ」
説明すると断言しただけあって、彼は淡々と話しを進めてゆく。
相変わらず、相手の事を考えないのは変わっていないが先ほどよりはマシだろう。