探している物は中々見つからないようで、セツイはまだ引き出しの中をかき混ぜている。
それを見ているのも飽きてきたので、瑞希はシノが乗っている棚へと目を向ける。
高さは腰ぐらいまでで、先ほどの部屋にあった棚よりは低いものだ。
見るとそれは本棚で、日本語では無い言葉でタイトルが綴られた本がキレイに色分けされて並んでいる。
何とか読めるものはないかと、背表紙を順番に見てみるがどれも意味を理解するどころか音にすることも出来ない。
つまり、それは英語ではいと言うことも差している。
端から順番に見ていると、初めて見慣れた文字が存在した。
日本語だ。
『誰でもできる会社経営』『世界グルメの旅』『神秘のパワーストーン』『夢占い~応用編~』『完全攻略・日本史の全て』(世界史バージョンも存在する)『薬剤師の秘密』『株まめ知識』『地名の謎』『現代の最新医療』『悪魔の知識』『現代版・聖書』『黒魔術』『陰陽道』『月の暦』『簡単!日本語教室』
「最後が・・・『プロが教えるお菓子作り』ぃ?」
つい、声が出てしまいセツイに聞こえてしまったかと危惧したが、彼には聞こえていないようだ。
変わりに、棚の上のシノがこちらに視線を向ける。
「これ・・・誰が読んだの?」
目が合ったのをいい事にシノにそんな事を聞いてみる。
いくらなんでも、この本棚はおかしい。
「モチロン、セツダヨ。決マッテルヨ、他ニ誰モ読マナイヨ」
ということは、全て彼が読んだ本ということになる。
興味を持つ範囲が広すぎないだろうか?
そして、日本語が話せるのにも関わらず日本語の本があるのはどうしてなのだろうか?
突っ込みどころが満載すぎて、面白いとさえ思えててしまう本棚だ。
「ソレヨリ、セツ!何ヲ探シテイルノサ?」
「眼鏡」
「セツ、ソレ本気?」
「え?」
「セツ、眼鏡ハ胸ポケットダヨ!」
「あ?」
シノに言われ、セツイは慌ててワイシャツの胸ポケットへと手を持っていく。
眼鏡を確認すると、おかしな言葉でうなりながらそのまま散らかった机の上へと突っ伏してしまった。
「ネ?言ッタトオリ。セツハ、ボケタ事良クスルノヨサ」
対するシノは、何故かとても楽しそうにしている。
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