テッテッテッテと机の上を歩き回りながらシノは喋り始める。
「エット、コノ夢想屋ハ、夢想ヲ売ッテルノヨ」
「夢想?」
「ソウダヨ。言葉ノ意味ハ分カルネ?」
コクンと瑞希は頷く。意味なら、先ほどセツイが広辞苑を読み上げたばかりだ。
「ヨシ。話ガ早イネ、ドンドン行クヨ」
テッテッテッテッテ、クルン。
と、机の端に来たら回れ右。
「ダカラ、コノ店ハ客ヲ選ブノサネ。」
セツイのおかしな関西弁も聞き取りづらいが、シノの言葉も聞きにくい。
「選ぶ?」
「ウン。マズハ扉ガ選別スルノネ。ソシテ、オ次ハ品物ガ人ヲ選ブヨ」
「え?」
「要するに、この店に選ばれなければ扉を開く事も出来なければ、欲しいと思うものも見つからないと言う事だ」
シノの説明にセツイが付け足す。
「友達、開けられなかっただろう?」
尋ねられて、思い出してみれば確かに玲は開けなかった。
しかし、あれは。
「ウチノ扉ハ。押シテモ引イテモ、ドウヤッテモ開クヨ。試シテミルトイイネ」
「さすがに、横へ引いても開かないけどな」
「セツ!煩イヨ」
「はい。すみません」
シノに怒られ、セツイは軽く謝ってから席を立つ。
「アレ、セツ。ドコ行クノ?」
「忘れ物取りに」
「何ソレ?」
「いいから、気にせず説明」
そう言い残して、セツイは先程瑞希が入らなかった扉の向こうへと消えていった。
ドアノブがないのでどうするのかと思ったが、扉は触れただけで向こう側へと押し開けられた。
「どこへ行ったの?」
「サア?アレガドコに繋ッガテルカヲ知ッテルノハ、セツダケヨ」
「そうなの?」
「シノハ、知リマセン」
プイとそっぽを向いて、シノは話を終らせる。