第4話
永夜が団子について悩み始めてしまったので僕は、一つ気になる事を尋ねてみる。
「ススキ飾る理由は?」
考えながら、地面を睨みつけていた永夜が僕の声を聞き、視線を上げる。
「ああ、元々十五夜が稲の豊作を祈るものだったらしくて、ススキはそれが変化したものらしいよ」
「なるほど」
「もう一個、面白い事おしえてやろうか?オレはコレ聞いて驚いたね。てか、意外にみんな適当だと思ったよ」
僕の言葉を聞いた彼は機嫌を戻したらしく、再び嬉々として語り始めた。
「何?」
「十五夜、中秋の名月なんて言ってるけど、実は満月じゃない日が殆どなんだと」
「・・・?」
意味を上手く理解できずに頭の中に疑問符が浮かぶ。
十五夜=満月=月見だと今まで思っていたのに、それら全てを否定された訳だ。
「月と地球の・・・ん?なんだっけ?えっと、ホラ、あれ・・・あの、だ~っと」
スラスラと説明していた永夜が急に日本語らしからぬ言葉を口にし始める。
それと同時に歩みをも止めてしまう。
「何?」
「うん。ほら、あれだよ、あれ」
「どれ?」
彼の言う事はイマイチ予測できない。
「えっと、だから、ほら月と地球が・・・回って・・る関係?」
「・・・・。回ってる?あ、公転」
パン!!
永夜が思い切り良く手を叩く。
「そう!それ!!月と地球の公転軌道の関係で、新月から満月までの日数が15日とは限らない。だからズレが生じる。ちなみに今年は2日あとが満月だそうな」
「何か、ショックだな。騙されてた気分だ」
「だろ~?」
カサの回る速度が突如速くなった。両手で器用に回している。
「ちなみに、オレ的一押し豆知識はその名前」
「名前?」
「そ。さっきも言ったろう?」
「十五夜の別名?」
「イェ」
聞き取りにくいが、あきらかに日本語ではない肯定。
「例えば、さっきの続きで。待宵(まちよい)とか。天満月(あまみつつき)、月の鏡。こうこうと照らす月明かりは月光、月華、月明、月気、月の顔。んで、眺めがいい夜を惜しむって意味で、可惜夜(あたらよ)って言ったり」
「そんなに羅列されても、覚え切れないし、訳わかんないんだけど」
「いや、なんつーか。オレとしては、日本語の良さをご理解頂ければ嬉しいな・・・っと」
「お前、どこの誰なんだよ」
「ですから、オレは陰陽師」
「まだ、引きずるかそのネタ」
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