1時間というのは、長いようで短い。
そして、短いようで長いのだ。
少年は少々イライラしきたようで、足が小刻みに揺れている。
「こんな状況で、どう勉強すりゃあいいんだよ。」
明日どうすんだ~、と天上に向かって叫んでいる様は追い込まれた受験生のようだ。
ガタン。と音をたてて立ち上がり、キッチンへ向かう。
冷蔵庫を開けて中から出したのは、ミネラルウォーター。
それを、持って机には戻らずに部屋の中をウロウロする。
ブー、ブー、ブー。
と急に妙な音がする。
ビクっと少年は立ち止まる。
どうやら、ケイタイ電話が鳴っているらしい。
しかし、少年は首をかしげ、部屋の中をあちこち見回す。
どこへ置いたのか覚えてないようだ。
ブー、ブー、ブー。
とケイタイは鳴り続けている。
こんなに、長い間鳴っているという事は、メールではなく電話らしい。
その間も、少年は床に落ちてるクッションを持ち上げてみたり、雑誌をどかしてみたりと部屋の中を行ったり来たりしてる。
「あっ、あった、あった。」
と言いながら、机の上の教科書の下からケイタイを取り出す。
「あ、もしもし?」
「だぁ、てめ、出んのおせ~よ!」
すごい勢いで相手はどなっている。
声が大きすぎて、電話口から思いっきり漏れている。
少年は一度ケイタイを耳から離してため息をつく。
「何だよ?こんな時間に・・・何の用?」
「ん、ん、んん。いや、全然。てか、逆に迷惑。」
電話の相手は、今度は普通の声で話しているようだ。
声は、電話から漏れなくなった。
「あっ、やべ時間、電話切るわ。じゃ、また明日。」
っと、一方的に電話を切って、時計を確認する。
もう12時、5分前だ。