気の向くままに徒然と・・・
| Admin | Write | Comment |
カウンター
New!
~足跡~
[01/12 館主 遼]
[01/12 nameress]
[05/20 館主 遼]
[05/20 蒼月薫]
[04/11 館主 遼]
プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
Letter
バーコード
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

読めなかった手紙 3

軽食しか置いていないので、そこまで客は来ない。それでも、アルバイトとしてやってきたオレにマスターは次々と仕事をくれた。

お昼の時間が終わると、再び店内は常連客の2人しかいなくなる。
マスターによると、次のピークはおやつの時間の午後3時頃かららしい。
それまでの間はほぼ客が来ないため、お喋りタイムとなるのだ。
「あの・・・前から疑問に思ってたこと聞いてもいいですか?」
「何?イツくん?」
「なんだ、イツ、改まって」
「お2人とも、普段何してる人なんですか?」
平日だろうが、休日だろうが、常にいるこの2人は何者なのだろうか?
それは常日頃から、思っている事だった。最初は学生かと思っていたが、先ほどの歌理さんの話を聞く限りでは学生ではないらしい。
「ん~、あたしは今はニートかなぁ」
「俺はフリーター」
「・・・笹帆さん、いつ仕事してんすか?」
「イツ、お前ってそんな失礼な事言うヤツだったっけか?」
「あ、いや。スミマセン」
「ササ君は気が向いた時しか仕事しないんだよ。しても、一日数時間。一つの仕事が長持ちしないんだって」
「そういう、歌理も似たようなもんだろ?」
「違うよ~、あたしは、しないんじゃなくて、できないの。今はそうゆう気分なの」
「逸貴くん。この2人の話はまともに聞いちゃいけないよ?」
「はあ」
「ちょっと、マスターその言い方はひどくない?」
「そうだよ。確かにいい見本ではないけどさ・・・」
「あはは、人にはそれぞれ合った生き方がある。良い悪いは他人が決めるんじゃなくて、本人が決めるんだよ。だから、僕はキミたちの生き方が間違ってるとは言わないよ」
「さっすがマスター!分かってくれてるね」
「だから、ここに来ちゃうんだよね。ここにはいつきても居場所があるから」

オレにとっては彼女の隣が居場所だった。
いつも側にいた。だから、いなくなるなんて考えた事もなかった。
想像したこともない世界が当たり前のように存在する。
彼女の笑顔を探して何度も何度も夢の中をさ迷った。その度に、彼女の泣き顔に出会う。
ダレが、こんなことを望んだのだろうか?

「そういえば、雲さん来ないね?」
「ん~また、担当さんに捕まってんじゃない?」
雲さんもここへ通う常連だ。しかし、彼の場合はここにいる2人と違いしっかりと仕事をしている人だ。
小説家らしいのだが、何を書いてるかは教えてくれない、そして本名どころか、ペンネームも教えてくれていない。それは、オレだけではなく常連客たちみんなに対してもそうらしい。
ただ一人、マスターだけは彼の名前を知っている。
「そういえば、締め切りが近いって言ってたね」
「年末に仕事するなんて偉いなぁ。雲さん」
雲さんは締め切りが近くなると家から出て来れないらしい。
編集社の担当の人に外出を禁止されると、いつだか話を聞いた時があった。
「おや、一応僕も仕事をしているよ?」
笹帆さんの言葉にマスターがわざとらしく主張する。
「あはは、そうだね。ホントだ。マスターとイツ君も仕事中だね」
店内が笑い声で包まれる。
なんだか温かい雰囲気に包まれたここは居心地がいい。
ここにいると、彼女の事をたくさん思い出すけれど、それが苦にはならないのだ。
だから、時間が許される限りはここにいたい。
ギぃーっとドアが軋む音がして、全員の視線がそちらへと向く。
「あ、雲さん!」
歌理さんが、名を呼ぶと雲さんは少し表情を曇らせる。
「ごめん、歌理ちゃん。声が大きいよ」
「いっらしゃい。終わったのかい?」
「いや、まだなんだ」
カウンター席に座りながら、マスターに苦笑してみせる姿は少しカッコイイ。
「だから、逃げてきた」
「ああ、休憩は必要だからね。いつものでいいかい?」
「ありがとう、マスター。逸貴」
「はい?」
「良く似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます」
雲さんはこうゆう人だ。
さらりとすごい事を言う。そして、仕草の一つ一つがカッコイイ。
常連客3人がそろい会話は益々盛り上がりをみせる。
盛り上がると言っても、ここにいる全員が基本的なテンションが低いので、大騒ぎにはならない。時々、歌理さんの高くわざとらしい笑い声が響くくらいだ。


 
PR
この記事にコメントする
NAME:
TITLE:
MAIL:
URL:
COMMENT:
PASS: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
≪ Back  │HOME│  Next ≫

[232] [231] [230] [229] [228] [227] [226] [225] [224] [220] [223]
忍者ブログ [PR]
material by:=ポカポカ色=