「あれ、僕だけ除け者?」
元気な光貴の返事の後に、呟かれたその言葉は他でもない弘貴のものだ。
「弘・・・?」
思わず彼を凝視する。
「何、兄貴?」
「何かあったのか?」
彼が冗談を言うなんて珍しい。
そもそも、今日は出かける予定があると言っていたのだが。
予定が変わったにしたって、彼の機嫌がいいのは珍しい。
「別に・・・兄貴こそ、何かあった?」
「別に・・・」
弟と呼び、兄貴と呼ばれているが二人は同い年だ。
早い話が双子なのだが、一卵性ではないので似てはいない。しかし、変なところで繋がっているのは確かだ。
「いつ兄!早くフロ行こう。ひろ兄なんてほっといていいよ!」
オレが去ったリビングで、何ともなしにテレビを見る弘貴と母さん。
「ねぇ、ヒロ」
「何、母さん」
「イツは何かあったのかしら?」
「何もないんじゃない?」
「そう?」
「うん」
「ヒロが言うなら、そうなのかしら?」
「うん。そうだよ」
「あんたもイツも隠すのが上手いから、心配なのよ。コウのように分かりやすかったらいいのだけど」
「僕たちまで、あんなんだったら、逆に大変だと思うけど?」
「・・・・そうねぇ」
どこかのんびりとした、けれど内容はそうでもない会話がなされた事をオレが知る事は無い。
寝る仕度を整え、さっさと自室に篭る。
遊べと光貴に言われたが、弘貴に押し付けてきた。彼は多分気づいてる。
机の一番上の引き出しには鍵がかけれている。特に理由はない。
そこに、彼女からもらった最後の手紙が入っていた。
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