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プロフィール
HN:
遼 莉杏
性別:
非公開
自己紹介:
自称、「言の葉」使いの物書き。

遼 莉杏と書いてハルカ リアンです。


最近のマイブームは
『薬屋探偵妖綺談』シリーズ
羞恥心

創作仲間・相互リンクしてくれる方を常に募集中。
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読めなかった手紙 7

『逸貴へ
最後のありがとうがいいたくて、この手紙を書きました』
そんな書き出しで始まる最後の手紙。これを、彼女はいつ書いていたのだろう?
『今日、夢をみました。とても、素敵な夢だった。それはね・・・。笑わないでね?逸貴と私でね海が見える小さな教会で二人っきりで結婚式をあげてるの。』
彼女が嬉しそうに語る姿が甦る。いつも笑っていた。
綺麗な彼女の声が聞こえてくる気がした。
『綺麗なウェディングドレスだったな。でね、またひとつ夢が増えました。夢で見たような素敵な教会で、素敵な式を挙げること。相手は・・・やっぱり逸貴がいいな。夢の中の逸貴はね恥ずかしそうにしながら、きっちり着こなしてすっごいかっこ良かったんだよ?信じられないくらいにね。現実でもそうなのかな?』
彼女の「夢」はたくさんあった。将来OLになるなら、どこの町に勤めたいとか、マスターが語るような夫婦になれたらいい、とか子どもは何人欲しいとか、それは簡単に叶えられる夢だった。
『私には確かめる事が出来そうも無いので、ちょっと悔しいな。だから、最後の抵抗。私が死んでからも逸貴が私のことを思い出すように、こんな手紙を残してみたの。ちょっと意地悪な事だって言うのは分かってる。でもね、忘れないで欲しかった。私がいた事を・・・。』
忘れるわけが無い。忘れたくても、忘れられない。どうして、そんな事を言う?
自分にとって、どれだけ詩望の存在が大きかったか・・・。
どれだけ、彼女の事を好きだったか・・・。
全て、彼女がいなくなってから気がついた。
『私を好きだった気持ちは忘れていいの、でも、私がいたということを、せめて逸貴には覚えててほしいと思ったの。逸貴には逸貴の未来があるもんね。私はもう過去の人。だから、逸貴は新しい道を見つけてね。いつまでも、私の事を思っていたら許さないから。逸貴は優しいから心配なんだ。私はねもう逸貴のそばにはいられないの・・・どうしてだろうね?』
今、願いが一つ叶うなら、時を戻して欲しい。そして、彼女と別れたあの日に戻りたい。
もう一度だけ最後に、彼女を抱きしめたい。それだけでいいんだ。もう一度だけ、もう一度だけ彼女の笑顔が見たいんだ。
綺麗に、だけど淋しげに微笑んで見送った詩望。
あの時、彼女は何を思っていた?もしかしたら、最後だと感じ取っていたのかもしれない。
彼女は、詩望は・・・どんな思いでこんな手紙を残した?
『ごめんね。こんなことを書きたいわけじゃなかったのにね。本当にごめんなさい・・・。私が逸貴を一番悲しませてる。出会わなければ良かった、付き合わなければ良かった。そんな風に言うのは簡単だけど、でも絶対にそうは思いたくない。だって、私は逸貴に会えて幸せだった。すごく楽しかった。大切にしたい思いをたくさんもらった。』
それは、オレだって同じだ。


神様は残酷だ。
どうして、彼女は幸せになれなかった?
どうして、病気にかかったのが詩望だった?
だれが、こんな結果を望んだ?
『だから、ありがとう。そう、これが言いたくて手紙書いたのにね。変な事ばっかり・・・。
後悔がないとは言えないけど、私は私にできるかぎりの最高の人生を過ごせたよ。
だから、逸貴はもっと幸せな人生を過ごしてね。それが私の願いです。
そして、最後にワガママを一つ。私に負けないくらいの、素敵な彼女を見つけてあったかい家庭を作って、そして・・・覚えていたら、私に見せてほしいな。
逸貴が幸せにしてるってちゃんと知りたいから。
だから、待ってるね。

でもね、本当に逸貴には感謝してるよ?
私を好きだと言ってくれてありがとう
たくさんの幸せをありがとう
逸貴のおかげで私は、笑っていられた。
一番辛いのは、無理して笑う逸貴を見てるときだった。逸貴が笑ってるなら私も笑わなきゃって・・・。
だから、私は最後まで笑ってるつもり、それはうまくいったかな?
そんな風に思えたのも逸貴のおかげ。
だから、ありがとう。

逸貴、ありがとう。』

最後の一言を読み終えて、オレは堪えていた涙を落とした。
彼女がいなくなってから今日まで、ずっと何かを探してた。
オレが彼女にあげて、オレが彼女からもらったもの。
それはきっと、まったく同じものだった。
彼女の言葉を信じよう。彼女の願いをムダにはしたくない。
でも、もうしばらくは彼女の影を追い続けてもいいだろう?
まだまだ、詩望という存在が大きすぎてそれをココロの中に仕舞うには無理がある。
もう少しだけ、もう少しだけ彼女の笑顔を夢に見よう。

明日は、マスターに時間を貰って彼女の家に行こう。マスターに見立ててもらった制服を着たまま、短い手紙を持って、久々に彼女に会いに行こう。

End.


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