「どうなってんのこれ?」
ずーっと下に見える町を見ながらヨアケに聞く。
「たまには夢の世界に浸ってみるのもいいだろう?」
帽子を被りなおしながら彼は答えた。
答えにはなってない。
「さあ、行こうか。のんびりしていると
虹が消えてしまう」
遠くにあるかと思っていたけど、そうでもないみたいで
虹は意外に近い場所にあった。
「知ってるかい?虹は向こう側からは見えないんだ」
聞かれた内容が理解できずヨアケの顔を見上げる。
「虹はね。条件を満たした場所からしか見えないんだよ」
すると、これからいったいどこにいくと言うんだ。
「虹の向こう側」に行くためにここまで来きたはずなのに。
彼は今ここでそれを否定している。
「じゃあ、どうするの?」
ヨアケがどうしたいのか分からない。
見えないのに行くというのだろうか?
「とりあえず、進もうか」
ボクを促し、ヨアケは先へ、虹へ向かって進む。
「ちょっと、待ってよ」
彼を追いかけて、見よう見まねでボクも体を前に進める。
ヨアケにはすぐに追いついたけど
すぐ側に見えるはずの虹にはなかなか近づかない。
すぐに彼の言葉を思い出して、気がついた。
―虹に向こう側は存在しない―
見えないって事はそうゆう事だ。