ダレに?
って聞いちゃいけない気がした。
何か、恐ろしい答えが待ってるような気がして。
「聞きたくない」
ボクは小さな声で答えた。
「もしかして気づいたのかい?」
ヨアケの声がほんの少し高くなる。
驚いているらしい。
ふるふるとボクは首を振った。
「じゃあ、どうして?」
「・・・だって」
言葉にならない。
「やっぱり気づいてるんだね?」
今度はコクンと頷いた。
きっとボクの考えはあってる。
くすりとヨアケが笑う。
「じゃあ、質問だ。お父さんの事は好き?」
「・・・嫌い。大っ嫌いだ!」
くすくすとヨアケが笑う。
「どうして?」
「だって・・・。だって、約束破った」
「でも、それは」
ヨアケが言葉にする前にボクはそれを遮る。
「仕方ないって分かってる!分かってるけど・・・。でも・・・」
「ごめんな」って言いながら、ボクの頭なでて笑う父さんの姿が思い浮かぶ。
謝らないで欲しかった。
そんな痛そうな顔しないでほしかった。
だって、しょうがなかったんだ。
父さんはわざと約束を破ったわけじゃない。
知ってる、分かってる。
だけど・・・。
許せなかった。
許せなかったんだ。
「別に、いいよ」って返事が出来なかった。
泣かないようにするのだけで精一杯で、父さんの言葉に返事ができなかった。
名前呼ばれたのに、返事ができなかった。
父さんと目を合わせることができなかった。
父さんの言うことはいつも正しかった。
いつものようにボクから「約束」を言い出した。
ボクはそれを信じてた。
絶対に守ってくれると思っていたんだ。
今までだって、約束した事は絶対守ってくれた。
休みの日に遊園地だって連れてってくれたし。
平日の父兄参観にも仕事休んで来てくれた。
欲しかったゲームも、テストをがんばったら買ってくれた。
だから、今度も絶対守ってくれるはずだったんだ。
ううん。
父さんは守ろうとしてくれた。
「コウタ君。キミに伝えてくれって。
『ごめんな、コウタ。約束守れなくって』」
「聞きたくない!そんなの聞きたくないよ!
父さんは謝らなくていいんだ。だって、ボクが、ボクが・・・」
「コウタ君。大丈夫、キミは悪くない。あれは事故だったんだ」
「でもっ!ボクが悪いんだ・・・」
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