「コウタ君」
ヨアケに呼ばれて、ボクは彼を見た。
「キミのせいじゃない。
あの事故にキミは関係ないんだ。
キミのお父さんはねあの日電車が止まってなくても
キミと約束してなくてもタクシーに乗ってたんだ」
ヨアケが言ってる意味が分からない。
「タクシーの運転士さん。
お父さんと知り合いだったんだ。
だから、運転士の方から声をかけた。
乗っていかないかい?安くするよって。駅に入る手前で呼び止めたらしいよ」
「本当に・・・?」
「本当だよ。警察が調べた事だから」
ダレも話してくれない大人の事情。
ダレも気づいてくれないボク(子ども)の痛み。
ぐっと唇噛み締めて、涙堪えた。
「我慢する必要はないよ。
コウタ君はお父さんが大好きだったんだろう?
気の済むまでここで泣けばいいよ。
大丈夫、ここでなら、誰にも聞かれる心配はない」
ヨアケがやわらかく笑った。
今までの、なんだか仮面のような笑顔じゃなくて
父さんみたいに、優しい笑顔だった。
母さんのためにも泣いちゃいけないと思ってた。
だって、余計に母さんを困らせてしまう。
あの日から、泣いてばかりいる母さんを守るためも。
ボクの前で、無理して笑顔作る母さんのためにも。
ボクはなんでもないフリしてないといけないと思ったんだ。
「キミのお父さんに頼まれたんだ。
キミを助けて欲しいって。
息子が苦しんでるからその苦しみを取り除いてやってくれって」
「言っていたよ。
『彼を苦しめてしまったのは他でも私自身だから。
言いたいことが、言ってやらきゃいけないことがたくさんある中で
選んだ言葉は最悪だった。彼に負担を増やしただけだった。
だから、事の全てをコウタに伝えて欲しい』って。
大丈夫、キミの思いは言葉はお父さんに届いているから」
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